●春来たりなば、冬遠からじ | 札幌の出版社 柏艪舎(はくろしゃ)

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●春来たりなば、冬遠からじ 【2018/11/30ツイッター投稿

 

山本光伸ツイッター
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いよいよ冬の季節だ。ということは雪の季節だ。ほぼ半世紀のあいだ、神奈川県の逗子で過ごした僕は、雪とまったく縁がなかった。スキーやスケートもしたことがない。したがって雪の生活にどうしても慣れないのだ。北海道へ移ってもう二十年以上になるが、未だに吹雪に出くわすとぞっとする。

 

雪見酒としゃれ込む余裕もなく、平日は今なお車で札幌へ通勤する身の僕は、冬場はいつも下を向いてやり過ごすしかない。要するに、一年の四分の一は存在しないも同然なのだ。これはひょっとしたら、花粉症に悩む方と同じような心境かもしれない。一年が短く感じられてならないのである。

 

家族がこちらへ引っ越してくる前のある冬には、札幌のホテルに百連泊したこともある。僕はずっとフリーの文藝翻訳家だったから、自分は一時間でいくら稼ぐのかという考え方が身についている。それでいくと、車での往復時間に前後の心身の準備時間を加えると、百連泊したほうがはるかに有益だったのだ。

 

冬場の運動不足も深刻な問題だ。吹雪いたらもう走れない。冬場はよくテレビでマラソンの中継をする。そこで僕は、床の上にマットを敷き、ランニングシューズを履いて、テレビ画面を見ながら選手と一緒に走ることにした。妻にはうるさいと言われ、ポテはじろりと僕を睨んでどこかへ行ってしまう。

 

選手たちは2時間20分ぐらいで42キロ強を走るわけだが、僕の場合はその半分にも満たない。徘徊しているのかと揶揄される所以だ。しかし運動しないよりは体調はずっといい。運動すれば健康になるのではなく、健康だと身体を動かしたくなると思っている。それが僕の唯一の健康バロメーターである。

 

ともあれ、これから長い雪の季節が始まる。車の運転に気をつけて、なんとか冬を乗り切らねば。そう言えば、運転の後期高齢者講習がもうすぐだった。今から春が待ち遠しい。しかしこのへそ曲がりで小心者の老人は、こんな腰折れを詠んでいる。「春来たりなば、冬遠からじ」。やれやれ。