●「共貧共苦」 | 札幌の出版社 柏艪舎(はくろしゃ)

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●「共貧共苦」【2018/11/29ツイッター投稿】

 

山本光伸ツイッター
@yamamoto_mitsu
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先日、面白い話を聞いた。「Boys, be ambitious!」の名言を遺した北大学長の故クラーク博士が、現代の金額で年俸7000万円、当時の高級官僚の優に三倍の給料で雇われたというのだ。しかも9ヶ月で北海道を去っている。僕はすぐに、ゴーン氏とトランプ大統領のことを思い浮かべた。

 

民主主義の根幹に個人主義があるように、共存共栄思想の根底にも利己主義がある。その利己主義をいかに抑えるかが人間の課題であって、その利己主義に歯止めがかからなくなった人間が大量に出現しているのが現代だろう。

 

トランプ大統領を支持している人達は、他人の利己主義に自分の利己主義が蹂躪されているのが我慢ならないのだろう。では、反トランプの人達はみな、日本国憲法が期待しているような利己主義とは無縁の、善意の人々なのだろうか。そんなことはあり得ない。

 

もしそんなことを信じる人がいるとすれば、度し難い阿呆である。相手の利己主義(ミー・ファースト)を認め、その結果生じる諸々を覚悟しなければ、そもそも相手との関係そのものが成立しないのだ。となると、大なり小なり、すべての人間がミニ・ゴーンであり、ミニ・トランプということになる。

 

共存共栄なるものを安易に信じているかぎり、いつか必ず利己主義の罠に落ちることになる。「自らを愛するように他人を愛しなさい」という命題ほど実行困難なものはない。だから僕は思うのだ。人間が人間らしく生きるには、「共貧共苦」、つまり共に貧しく共に苦しむという思想に拠るしかないのだ、と。