病室に着くと呼吸は止まっていた。
救命措置、心配蘇生をしない選択をしていた私。
「心臓マッサージしたら心臓は動くね」
お義母さんは言った。
「。。。」
息子は泣きじゃくった。
なんて声をかけていたか覚えていない。
私も自然に涙が溢れた。
「酒との戦いがやっと終わった」
「誰かに迷惑かけなくてよかった。
誰かを轢かなくてよかった。」
そう思った。
そう思ってしまった。
20年以上一緒にいた旦那。
もちろん悪いことばかりじゃなかった。
アルコール依存症になる前(もういつからアル症なのか分からないけど)は楽しかった。
旦那は誰からも愛され周りの人をいつも明るくさせる人だった。
仕事もできた。
でも、自分で酒をコントロールしてたつもりがいつの間にか酒にコントロールされていた。
酒に裏切られた。
「もっと強く母ちゃんがやめさせればよかったね」
「ごめんね父ちゃん」
そう独り言のように呟いた時、娘が言った。
「やめれたとしてもまたどうせ飲むよ。
繰り返すだけだよ」
「1ねんやめたってまたどうせ1年後に飲むんだか ら」
娘は泣かなかった。
最後まで泣かなかった。
9歳の娘。
強がりなのか、本当に悲しくなかったのか分からない。
息子12年間。
娘9年間。
父親と過ごした時間は3年違うけどこうも違うのかな。
娘が物心ついた時からもう旦那は酒ばっかりだったのかもしれない。
医師からの死亡診断があって葬儀屋に電話して迎えに来てもらう間、息子が言った。
「俺たちは大丈夫だからね」
「母ちゃんがこれからも変わらず俺らを守ってくれ るって分かってるから。
母ちゃんがいつも通りそばにいてくれるから父ち ゃんいなくても大丈夫だから」
幼くして父親を亡くした子ども達。
なかなかヘビーな人生だと思う。
でも、子ども達は私と一緒の事を言った。
「やっとお酒との戦いが終わった」
旦那は1月22日、23時21分。(医師の死亡診断があった時間)
47歳、アルコール性肝硬変、急性肝不全の為亡くなった。
入院期間は14日間。
出会って22年。
結婚して17年だった。