本来ゲームというのは指定された適切な人数でやるものでありますが、私はソロプレイ中心です。もちろん気の置けない同好の士が遠方にいるから、というのも大きな理由ですが、私のゲームに対する楽しみ方に因るところも大です。
ロジェ・カイヨワ先生は著書「遊びと人間」の中で遊びの本質をアゴーン(競争)、アレア(偶然)、ミミクリ(模倣)、イリンクス(眩惑)の4種類に分類されていますが、私はウォーゲームに「歴史の追体験」を期待する派であり、ミミクリを最重要視しております。結局のところ、私としては、ロシア遠征で大勝利するナポレオンや、アレクサンダー大王をボコボコにするダレイオス三世はあんまり見たくないのでありまして、ゲームバランスなんぞ二の次なのです。
(と、友人とプレイする時も、負ける前に言い訳しております)
さて、本日、ご紹介するゲームはそのミミクリの点で忘れ得ぬ想い出のあるバンダイの「関ヶ原」です。
ウォーゲームというやつは高価な割に外から見ても何が入っているのかさっぱり分からず、とくにバンダイの箱はマップもユニットも一切記載無しなので、これを購入するのはかなりの思い切りが必要でした。
プレイヤーの立場は東西の総大将で、この点は「関ヶ原」のゲームに一般的。
ミミクリの観点からいけば、気分は内府徳川家康か石田治部少輔です。
マップは松尾山から南宮山までの関ヶ原。
ユニットは旗指物形状のコマで、戦闘結果はダイスではなく戦闘カードによるものとなっています。
この戦闘カードには、1から9までの数値が書かれており、両軍がそれを良く切ってそれぞれ山札にします。
そこから5枚を手札として、1枚ずつ出し合い数字の大小で勝負を決する、というもの。手札は5枚を使い切ると補充します。
まさにプレイヤーの腹の読みあいが重要なあたりは、ソロプレイヤー泣かせ。とりあえず、あらかじめ戦闘の組み合わせの重要度を記録して、次のターンの組み合わせ予想までやって、そのうえで手札の割り当てを・・・という実に邪魔くさい方法で対処することにしました。
ところで、このゲームでは大名が5種類に分かれています。
東軍主戦部隊:赤色/井伊直正や福島正則など。開始時より移動攻撃可能。
西軍主戦部隊:青色/石田三成や宇喜多秀家など。開始時より移動攻撃可能。
東軍予備部隊:薄赤色/徳川本体など。攻撃されて初めて移動攻撃可能。
西軍予備部隊:薄青色/南宮山の諸隊。部隊が攻撃されるか、西軍が東軍予備部隊を攻撃すれば移動攻撃可能。
松尾山軍:黄色/小早川秀秋ほか。去就ルールで参戦決定。
面白いのはこの松尾山軍の去就の決まり方です。
戦闘によりコマが除去するごとに戦闘カードを1枚めくり、その数値を累積していきます。
これが東軍なら60点、西軍なら80点を超えた時点で、金吾中納言小早川秀秋はそちらに参戦するというルール。ですから、本当に勝っている側につくとは限らない(小早川秀秋には戦況が正しく伝わらない)のです。
ゲームを開始すると、たとえば戦術級関ヶ原の雄であるツクダの「激闘!関ヶ原」やアドテクノスの「異聞関ヶ原 家康最大の敗北」では、なかなか戦線が動かず一進一退の攻防が続くのですが、このゲームはまぁ実にブラッディ。
ZOC有りのマストアタックで、ユニットは損耗状態無し。戦闘結果は退却か、除去となります。このため、中盤あたりから両軍とも景気良くコマが除去されて行きます。
また、関ヶ原関連のゲームでは小早川隊が弱くて雰囲気が出ないことが結構あるのですが、これは、ゲームの規模の問題で大軍のアドバンテージが評価されにくかったり、戦闘ルール上、小部隊を集めてきたらなんとかなったりする(つまり、小早川隊に頼らなくてもよい)からでしょう。
ところがこのゲームの場合、小早川隊の戦闘力は福島隊と比べても何ら遜色ありません。

数値は「移動力-戦闘力」です。
(それにしても兵隊コマの所属が見辛い!)
それゆえ、兵力を温存し続ける小早川隊の重要度と不気味さは半端じゃないのです!
で、なかなか裏切らない小早川秀秋にほかのゲーム以上にイライラし、「おのれ、金吾め!」となるのですが、これがソロプレイとなると・・・
両軍の損害の出方がほとんど同じ。差が広がらずに累積点数がじわじわ増えるのみ。小早川秀秋はなかなか参戦しないばかりか、どちらで参戦するともつかず・・・
ゲームの勝敗は
1.除去された武将ゴマ(武将名前付きのコマのみ)の戦闘力合計が30を超えたときは敗北。
2.徳川家康の武将ゴマが除去されたら東軍の敗北。
3.10ターン終了時に盤上に残っているコマの戦力差で決定。このとき、松尾山軍が未参戦なら西軍扱いとする。
このままでは小早川隊の参戦前に勝敗が決してしまうかも…。
それだけは絶対に避けたい。松尾山が勝敗に関わらない関ヶ原なんぞ見たくもない!
どっちが勝っているのだ、このままでは元も子も無くしてしまう!と、焦りまくる私の気分はもはや徳川家康でも石田三成でもなく、完全に小早川秀秋です。
ひょっとすると催促の鉄砲でも射かけられるんじゃなかろうか?
と、思い始めたその時!
福島隊の戦列に大穴がこじ開けられ塞げなくなりました。
そこを宇喜多隊の騎馬コマが走り抜け徳川本体に斬り込み!!
これを見た南宮山の諸隊は一気に東軍に突撃を開始しました。
そして東軍予備部隊が呑み込まれ、ついに小早川秀秋は西軍として参戦。徳川本隊に向けて進撃を開始・・・
勝敗は西軍勝利となりました。
バンダイのウォーゲームはずいぶん批判に晒されていたそうですが、当時(シミュレーションゲーム原理主義華やかなりし頃)の事情は知らず、その視点の妙は今も私のツボなのであります。




















