俺逹の控え室になっているホテルの部屋で
荷物をまとめているとドアが小さく三回ノックされて
アンタが入ってきた。

ちょっとビックリした顔をしたアンタが

「松潤…帰るの?」

「………帰るよ。」

何か言おうとして、言葉を探しているアンタに

「明日…早いから。今日中に帰んないと」

あぁそういう事か…ちょっとホッとしたような
納得したような顔をしたアンタが

「そっか…じゃぁ仕方ないな…」

でも…と言葉を繋ぐ。

「光さんに ちゃんと挨拶してから帰って」

少し緩んだ空気が一瞬でピリッとする。

黙っている俺に

「今回のレースは、俺が光さんに頼んで勝手に決めた。
みんなや松潤には迷惑掛けて悪かったと思ってる。でも…」

珍しく強い口調のアンタの顔を見ると、
今まで見た事もない様な目をしたアンタが
俺を見据えていた。

「最初は俺の持ち込み企画だった。
でもそれにプロデューサーが乗って、事務所がOKを出した。
イイもイヤもない。レースには出る。
レースに出るには光さんの力が必要なんだ。
分かるな?
松潤…これは仕事なんだ。」