こんなメールが配信されてきました。

GmailのHelp me writeは、GoogleのGeminiを使った文章を書くことを代行、あるいは支援する機能です。例えば、恩師への礼状、結婚式への招待状、講演の案内状など、いい文章を書きたい時に使えそうです。もちろん、加筆訂正できますが、そのままでも十分に使える完成された文章が生成されてくるようです。自分の作成した文章を、よりアカデミックにとかのニュアンスの指定や、より詳細に、少し簡単になどという文書そのものの構造を変えることも可能だそうです。送られてきたメールへの返信もできると言っています。随分、便利になったと思う反面、そんなことで良いのかという思いを抱くのは私だけではないでしょう。

 

手書き文字の上手な欧米人に出会ったことはありませんが、それは、彼らがタイプライタを使って文章を書き、ペンを使って文字を書く機会が少ないからだと思います。英国人とミーティングをした際、彼がホワイトボードに書いた字が読めなかったことがありますが、喋りながら書いたので理解できました。しかし、書かれた文字はアラビア文字のようだったことを思い出します。ついで言えば、図も下手でした!医者は悪筆が多いことで知られていますが、Drの署名ならともかく、所見、処方でアラビア文字のような字を書かれ、その字体を読めるお付きの看護師に聞きに行ったことが実際にありました。

字は下手よりも上手い方が得であることは確かです。今の年賀状は、宛名も本文もパソコンで印刷だし、情報交換もメールなので、どんな字を書くのか分かりませんが、顔を合わせてホワイトボードを使って書いたり描いたりして議論する際、『この人、ウマいなぁ~』、『随分下手!』などと思うことは皆さんも経験するところでしょう。

小学生ならともかく、社会人になっても下手な人はどうしてなんでしょう。上手ではなくてもとにかく読める字であることが必要ですが、とても読めない字を書く人がいます。答案用紙に自筆で書かなければ試験、直筆で書かせる履歴書では、字の上手い下手、キレイ、汚いが出てしまいます。履歴書では、きれい/上手な方が印象は良いのは当然です。そのために、セミナまで開かれるようですが、付け焼き刃で、クリアできるはずがありません。本来手で書く字を、タイプライタやパソコンにしてしまった結果、字が下手な人が増えてしまいましたが、文章はどうでしょう?

 

私は、時々ChatGPT、Geimini、Copilotなどの生成型AIと対話しますが、彼等が生成してくる文章は文法的にはもちろん、とても洗練されていることに驚きます。ChatGPTは1750億件、その他も同等件数の教師データを読み込ませて作られた頭脳を持っています。知識そのものだけではなく、文法的に完全であり、文章の展開、表現方法も凡人ではとてもかなわないレベルです。しかし、文章を書いてもらう=代筆係りとしての使い方は問題です。文章は、書く人の教養、人柄、価値観、知的レベルを表していて、文は人なり(18世紀のフランスの博物学者ビュフォン)という言葉まであります。その文章を代筆してくれる機能(help me write)をGmailが提供するのは構わないけれど、それに頼ろうとするのはいささか情けない話です。

 

国会答弁で、官僚の書いた答弁書を読み上げる閣僚をよく見かけますが、自分の主張したいことを自分の言葉、文章で表わすことができず、人に書いてもらうだけではなく十分な理解もなく棒読みするとは!・・・情けないと思わないかと思うのは、私だけではないでしょう。しかも、その質問は事前に通告することになっているもので、その場で即答というものではありません。無理かもしれませんが、当意即妙に答弁するオバマ大統領、メルケル首相のようになって欲しいものです。

 

では、文章力を磨くにはどうしたらいいでしょう?私は、上手い文章の話の展開の仕方、表現を参考にするのも一つの方法だと思っていますが、天声人語はその典型です。新聞一面の下にあり、東大など、あちこちの大学の入試で引用されるこのコラムは、記者の中でも優れた文章を書く人が担当しているようですが、とても参考になっています。限られた字数の範囲でうるさ型の多い読者を唸らせ、納得させるこのコラムの文章を読むことで、話の展開の仕方、表現方法などを勉強することができると思います。誤解なく理解してもらえるように書かれる社説も良いかもしれません。誤解なく・・・そうです、文章は誤解なく言いたいことを伝えられなければなりません。プレゼンなら、その場で修正することができますが、文章は手元を離れた以降、書いた文章を修正することができません。文章は、書いた人がその場にいないプレゼンテーションと捉えてもいいでしょう。

 

プロジェクトメンバには、レポート/仕様書/メールなど、文章をリリースする前に最低やることとして、次のポイントを示してきました。

・読み手の知識レベルを踏まえた言い方になっているか

・論旨展開の前後関係を見直したか
(サラッと読めるようになっていること)
・テーマに対する結論が明確になっているか

・同じ言い回しや言葉を何回も使っていないか

・適切な接続詞/テニヲハ/文節の修飾関係になっているか

 

でも、最初にやるべきは、何でもいいのでとにかく文章を書く習慣を身につけることだと思います。どのようにしてそれを実践するのか?過去実践してきた方法を、今後適宜紹介します。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

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