お薬手帳を電子化して電子処方箋にする施策の普及が進まず、6%程度となっていることは前回紹介し、紙のお薬手帳は30以上前の1993年から使われ、深く広く浸透していることも紹介しました。情報、データを電子的に取り扱えるメリットは容易に思いつきますが、国の制度に関わる場合にはそのメリットを感じる環境を構築するまでに要する時間、予算が膨大になることを考慮しなければなりません。マイナンバーの場合、なかなか進まない普及に業を煮やした政府が2兆円の人参をぶら下げることでようやく、カードを取得する人が増えましたが、国や官僚はそこまでやらないと❝その気にならない❞人が大多数であることを理解したでしょうか?しかも、2万の奨励金が貰えるので行列をつくって取得した皆さん、そのカードを使っている気配がみえません。それとこれとは別?全国保険団体連合会の調査によれば、マイナンバの応用系であるマイナンバ保険証の利用率を見ると上がるどころか8ヵ月連続で下降傾向を示しています。

マイナンバカードを使ってコンビニのコピ―機で住民票を取ろうとしたら、他人の住民票がプリントされて出て来たというあり得ないトラブルが発生したことは皆さん承知のことと思います。

それが1回2回ではなく、全国で多数発生しました。システムを開発した富士通japanは河野デジタル相に怒られましたが、発生原因はアクセスが集中すると誤動作するというものでした。本当?アクセスが集中すると待たされたリクエストがタイムオーバになってしまうことは過去にもありましたが、それが原因で他人の住民票がプリントされてしまう現象は思いつきません。まさかバッファオーバフローしてプログラムを壊した?しかし、それが起きたとしても、ダウンせずに他人の住民票がプリントされてしまう現象が起きる・・・なかなか思い付きません。

 

一般的にこの種のサービスは、リクエストを受け付け続けるとバッファオーバフローになりそうな状況と判断するロジックをいれておきますが、その機能が効いていれば(入っていれば)新たなリクエストには抑制がかかって送られて来ないので、バッファがオーバフロー状態になることはなく、従って処理が不正になることは避けられます。まさか、富士通japanはそれをやっていない?しかし、同社が処理が集中すると誤動作するバグと発表したとのことなので、この辺の処理を入れていなかったのか、アクセス集中時のテストをいい加減にやっていた可能性があります。それでテストをしたことになるのかテスト方法のレビューをやったのか?

 

ユニーク( uniqueness/唯一無二)を保証しなければ成り立たないマイナンバが、渡邉を渡辺としたり、髙橋を高橋にしたりという名前のミス、旧字や難解な漢字を含む住所の入力ミスで他人の保険証に結び付けられたりしている事案が多数発生している問題もあります。本人確認ができないための保険が使えず、全額自己負担という事態まで引き起こしています。これでは、安心して使えませんが、この辺の不具合は、住民基本台帳をシステムに載せる際に経験しているはずで、そのノウハウが生かされていなかったのかもしれません。

 

入力時点でクリーンデータになるよう考えるのができるSEのすることです。そのために何をしなければならないかを知らないSEが担当していたとしたら、そのSEを擁する富士通japanのシステム設計能力がなかったということです。政治日程に合わせられての見切り発車だとしたら功を焦った岸田さんの判断ミスだし、その計画を作った有識者会議の面々、官僚が如何に現場を知らないかが露呈したということです。

 

翻って電子処方箋です。

厚生労働省の病院報告(2020年度)によれば、全国の病院の1日平均在院患者数は116万5389人。これに一日平均40人と言われる全国の診療所/クリニック(104292ヶ所)を約400万、これに67899ヶ所という歯科と61791ヵ所の薬局を併せたら、コンビニから住民票などの自治体サービスにアクセスしてくる数の何十倍にもなります。この数をタイムオーバや送信抑止にならずに捌くのに必要なハードウェアとソフトウェア(プログラム)を作れるのでしょうか?技術革新が続くハードウェアは費用面を度外視すれば何とかクリアできるとは思うものの、富士通japanの様な日本を代表するSIerが上述のようなレベルの低い事故を起こすようでは、信頼性の高いソフトウェア(プログラム)を作れるのか懸念が残ります。

 

しかも、今の電子処方箋システムには重大な欠陥があります。折角処方薬の電子化ができているのに、こんなことをやっていました。

これから処方しようとしている薬が、既に当該患者が服用している薬と併用不可なのか否かを電子的に照合しているのかと思いきや、薬剤師がやっているとのこと。これにはシステムを設計したSEの無能さに呆れました。何のことはない、紙のお薬手帳を見るのではなく、画面に表示しているだけ適否は薬剤師がチェックしている・・・自動販売機の中に人が入って商品を出しているようなものではないか?そもそも、電子処方箋システムは独立しているのではなく、どうして電子カルテの処方機能と連動させないのか?処方時点で当該患者の他院を含めた投薬情報を参照し、併用可不可のチェックをすべきとは考えなかったのでしょうか?

 

最終ゴールを見据えた医療DX(私は医療機関統合情報システムの方が正しい呼称だと思います)を考えられる人が厚労省専門家委員会のメンバにいれば、個別用途向きのパッケージ開発のような今回の電子処方箋システムなどは作らなかったと思います。

 

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