本庶先生の発想は、研究者の多くがやっていた免疫力を高めて戦闘力を増す研究ではなく、がん細胞がどうして免疫細胞に勝って増殖を続けるのかの地道な研究を続け、『がん細胞が免疫細胞に免疫力を発揮させないようにブレーキをかけている』ことを突き止め、このブレーキを外すという機能を持つPD-L1(PD-1)の開発につなげました。

今日も、先日のブログに引き続き、免疫療法についてです。文藝春秋のWeb版に解説記事がありましたが、抜粋してポイントとなるものにアンダーラインを引きました。
従来の免疫療法は定量的で厳密な評価をしていない
従って効果は不確か
唯一厳密な治験プロセスを経たものが発表された


立花隆氏が言っているように『免疫系が病原菌をやっつけるように、何らかの手段で免疫力をパワーアップして、がんを攻撃できるようにする』というアイデアは悪くないと思うし、素人にも分かり易く、藁にもすがる思いの患者は飛びついてしまいます。しかし、NHKクローズアップ現代で紹介された京大医学部長だった本庶先生の従来型の免疫療法への見解は厳しく、『がんの専門家のほとんどが、がんの免疫療法は眉唾だろうと考えていた』とのことです。先生の研究チームは、これまで馬力にものを言わせる免疫力upではなく、免疫力を発揮しないようにブレーキをかける(免疫細胞ががん細胞攻撃を止める)メカニズムに注目し、これを解明し、その成果を踏まえた療法を完成させました。この薬剤の開発を打診された薬剤メーカは過去の同種の事例を観てきたことから、効果につき、懐疑的だった!というほど従来の免疫療法、薬剤は効果が不確かだったということです。今までの免疫療法を標榜するクリニックが如何に根拠の乏しい高額な治療をやってきたかが浮き彫りになりました。

私の盟友もこれでやられました。

彼らのホームページを見ると、以下のような具体的な数字を挙げています。

しかし、治療したことと、その治療で効果があったか否かについてのデータがなく、因果関係もわからない。何名治療し、何名が再発しなかったのか、またガンが増殖しなかったのか、縮小したのかのデータがない。対象患者が過去にどの様な病歴、薬歴、治療歴を持っていたのか、ガンの種類は?など、効果を定量的に分析・評価するために必要な情報がないという、EBMの基本から外れた数字を実績として掲げていることが分かります。倫理というか良心に恥じないのかどうか、医療機関、医師の姿勢が問われます。

注意すべきは、先日のブログの後ろの方にも書きましたが、本庶先生の研究成果を踏まえたとするクリニックが出てきたことです。本庶先生の治療法を紹介した“NHKクローズアップ現代”の抜粋まで作ってホームページで紹介しているところもあります。彼らの免疫療法は否定されているのにも拘わらず、そこは無視してあたかもNHKによってオーソライズされたかのような書き方をしています。藁にも縋りたい患者とその家族の心理につけ込む悪い連中、います!十分注意しましょう。

※インチキ療法については以下のブログにも書いてあります。騙されないようにしましょう。
インチキ治療の実態/効果を示す証拠の信憑性
インチキ治療の実態/末期がん患者vs悪徳医師

 

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