今までのインチキ免疫療法ではない、理路整然とした(evidenceのある)免疫療法を開発した京大の本庶先生が今年のノーベル医学生理学賞を受賞しました。この療法、以前当事務所のホームページ(コラム)に掲載していましたが、受賞を機に再掲します。
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投稿日: 2016年4月24日 作成者: 杉浦 和史

根拠の希薄な胡散臭い今までの免疫療法とはまったく異なるEBM((evidence-based medicine)にかなった免疫療法があります。効果判定は最も信頼性が高いランダム化比較試験法を使っているので信用できます。スクープ記事を連発する文藝春秋でも紹介されましたが、京大医学部長だった本庶名誉教授が開発した療法です。要約すると、以下のとおりです。
①免疫細胞には、攻撃中止を命じる機能(PD-L1)がある
②誤って自分の臓器、神経を攻撃した時、これで止めることができる
③がん細胞はこれを悪用している
④がん細胞は免疫細胞から攻撃されると免疫細胞にPD-L1を生成させる
⑤免疫細胞は攻撃中止と解釈する
(PD-L1以外の方法も使っている可能性がある)
⑥がん細胞は④の方法で免疫細胞からの攻撃を避け、増殖を続ける

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そこで、がん細胞が生成するPD-L1を抑制し、免疫細胞ががん細胞を攻撃する勢いにブレーキをかけないようにすることを考えたのが本庶教授の研究チーム
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“免疫チェックポイント阻害剤”を作り、治験を行った結果、劇的な効果を確認したのが下図。これは該当論文(⇒メラノーマnejmoa1412082)からの抜粋(325頁Figure 1)したものです(日本文の注釈は私)。

免疫療法はレーガン大統領の主治医の一人であったRosenberg医師が研究を進めていたものでしたが、有効ではないとの結論を得て、新薬開発のプロジェクトは解散しました。欧米では見向きもされない免疫療法がどういうわけか日本では生き続け、藁にもすがる患者を逆手にとって(騙して?)法外な費用で免疫療法がまかり通っています。宝くじに当たるのを期待することと同じですが、偶然効果があれば針小棒大に宣伝に努めます。失敗したとしても、末期ガン患者なので別段問題になることはありません。そこが狙い目かも知れません。
なお、既述のがん細胞にブレーキをかける作用をする機能を抑止するという京大の本庶名誉教授の見解をみて、早速“ブレーキ”という言葉を取り入れたクリニックもあります。しかし、残念なことに間違っています!

眉唾の免疫療法クリニックが多数の患者を集め集金マシンになっていますが、片棒を担いでいるのが、定年後、免疫療法をうたうクリニックで小遣い稼ぎをしている元がんセンター、がん専門病院の医師達です。現役のがん専門医達も非常勤としてアルバイトもやっているようです。クリニックでは患者を集めるためにその様な肩書きが必要だからです。少なくともこのコラムの読者は騙されないようにしていただきたいものです。(従来のインチキ免疫療法については別途書く予定です)

 

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