jokegirl -26ページ目

ままならない

 あまえちゃいけない

 ちょっとやさしくされたくらいでゆだねちゃいけない

 すきだとおもえばつらくなる

 かんちがいしすぎてまちぼうけしてしまう

 じぶんにとくべつがふりそそいでるわけじゃない

 そうじゃないんだ

 みんなのふつうがとくべつにおもえてねだってしまう

 じぶんへむいてるおもいなんかじゃないのに

 ほしがってしまう

 まちわびてしまう

 それじゃだめなんだ

 むこうはなにもおもっちゃいない

 ただふつうのことしてるだけ

 じぶんのよっきゅうをあいてにもとめてしまうわるいくせ

 うっかりするとはどめがきかなくなるひどいくせ

 きがついていてもしてしまうなさけないさびしさ

 あまえちゃいけない

 もとめちゃいけない

 とくべつはそこにはないんだから

 あのやさしさはだれもがもってるものだから

 じぶんだけのものじゃない

 あたえてもらえるよろこびばかりでまちぼうけ

 あたえるうれしさわすれてなげいてる

 してもらうことばかりでうごいてないよ

 ただひそんでる
 
 ただめんどくさがってそこにいる

 おもわれていないとなげいて、そこにいる

 あまえんぼう…

 もうどうしょもなくかわいくないってわかってる

 ずうたいのでかい、あまえんぼう

 さびしさ食べていきている

 あまえちゃいけない

 かんちがいしちゃいけない

 そんなことつぶやきながら

 ひたすらゆめみるさびしんぼう

今日もまたきてる

 なにが悲しいかって?

 それはだだの通りすがり

 興味もないのにのぞいてゆくだけのであい

 ただかってにあしあとつけてにげてゆく無神経さ

 なかみのない群がりでほくそえんでるあわれな住人

 それは愛でもなんでもないんだよ
 
 それは愛じゃないんだよ

 と

 それはつられた優しいありんこ

 甘い砂糖さえそこにはないのに

 誰かの満足のためにできた道をたどってしまっただけのこと

 誰かにさ、

 愛されてるわけじゃないのにね

 なにか勘違いしてるみたいだよ

 …それでも満足してる通りすがりが

 にくらしい


 

でたらめなうたをうたいながらあるくどようびのひるさがり

 まわりでだれもしないようなことをする

 ともだちもめどくさがってしないようなことをする

 それはちょっとしゅみのせいかい

 やってるひとはかくじつにいるけどもじぶんのまわりにはいないこと

 たとえばこーひーをまめからひいてのんでみる

 ふえるとかってきてますこっとつくってみる

 わざわざこうえんのといれまでいってつかったあとにそうじしてみる

 べらんだにふとんしいておひさまのなかごろねしてしみがこわいとわらってみる

 かってるいぬをつかまえておしりのあなのにおいをくんくんかいでみる

 ひがなきゅうじつおんせんきぶんといいはってひまさえあればいえぶろにはいってみる

 ふろばでとうさんのびーるなんかのんでみる

 にがくてすてる

 けいたいのでんげんきってばっくにしまいこんでけいたいなくしたの、といいはってみる

 とにかくひもをむすんでむすんでむすびまくってなんかできないかなとまたむすんでみる

 あるばむのしゃしんをならべかえてみる

 なんかえになんないかなとならびかえてみる

 みちばたのいしころひろっておまもりだとおもいこんでみる

 まゆげをくろくふとくかいてみる

 げたをはいてさんぽする

 カランコロンカランコロン

 あ~したてんきにしておくれ…
 


 なにかを期待してただ待ってる自分がいる

 誰かに何かを期待してじっとしてる自分がいる

 自分からなにもしないくせしてただ待ちわびてる自分がいる

 神様に期待して
 
 親に期待して

 友だちに期待して

 おみくじに期待して

 なにかを…

 誰かを言い訳にして

 自分を言い訳にして

 世の中のせいにして

 なにもしない自分がいる

 …それでも

 悪いこととおもいつつ

 何かを期待して待ってるばかな自分がここに、いる

 ずっと、いるんだよ

・静かな二人の時間・ 1

 家にばかりいると母親が心配する。

 なんもない伊豆の田舎に帰ってきたけども…

 知った顔にあったらイヤだな、と思い続けてもう1ヶ月が過ぎてしまった。

 30過ぎてなにやってんだか、私。

 嫁にいくわけでもなく

 仕事探すわけでもなく…

 こんな田舎で終わりたくない、と意を決して飛び出した20の頃。

 雑誌の編集者になるんだっとか決意して夢をもって東京に行ったけども

 受ける会社すべて履歴書つっかいされて、あぁやっぱ高卒に夢なんてないのかと嘆いたり。

 ここじゃ高卒だってあの頃たくさん就職先あったっけな。

 なんか懐かしい。

 地元のJAなんかに勤めて電話応対してた毎日…

 ここは私の居場所じゃない。

 十年後の私の姿見えないですから、なんてカッコいいこと言って退職願突き出して辞めた青臭い自分。

 あほすぎる。

 世の中なめてた。

 田舎娘に都会は優しさなんかくれなかったね。

 結局親が心配して介護の専門学校入れてくれて生活費仕送りしてくれて…

 やけになってた私は親のありがたさもわからないまま学校の年下ばかりの同級生つれまわして遊び放題。

 バイトしても4時間ともたなくて次の日いかない、なんてこともしばしばやらかしてたな。

 専門学校かろうじて卒業しても夢捨てられなくて…

 出版社ばかり探しては落とされて、バイトすらもなれなくて…

 落ち着いた先が本屋のアルバイト。

 しかもこの約10年で本屋も6件変わって、得たものって…なんだろう?

 思い浮かばない。

 その間には父さん亡くなっちゃうし。

 でも、それでも田舎には帰りたくなくて、一生東京にいようって思ってて…

 なのに不景気のせいであっさりクビ。

 いくとこもないし、お金もないし…

 情けないけども母さんの年金頼りにもどってきてしまった、この町に。

 お姉ちゃんには「真由は都会でがんばったよ、ゆっくりやすめばいいって」なんて優しい言葉かけられちゃって…

 ますます自己嫌悪だ。

 お姉ちゃんはさっさと地元の人と結婚して専業主婦になったから働く女は大変だ、とか思ってるとこがある。

 でも私にしてみたら専業主婦してるお姉ちゃんのほうが大変だと思うし、偉いと思う。

 自分なんて…

 正社員にさえなれなかった本屋のバイトのネーちゃん終わりのダメな子だよ。

 いや、”子”なんて言えない歳だけども…

 結婚して私も旦那に喰わせてもらいたい、なんてずうずうしいこと思ったこともあったっけな。

 でも都会の男は今じゃ一人でなんでもできちゃって彼女いらない、とか言う人多いし。

 自分にお金かけたい、みたいにね。

 イイ男みっけ、と思ってもたいがい結婚してるし。

 そういや6年前の私はばかなことしてたな、恋で。

 不倫。

 知らなかったとはいえ、自分が不倫するとはね。

 恋人になるんだから隠し事しない、なんて理想かってにつくってて、結局だまされちゃった。

 ばかな田舎娘、だまして楽しかったのかな…あの男。

 奥さんいるならいるって言えよ、わかってたら付きあわなかったのに。

 人のものとる女にだけはなるまい、てずっと決めてたのに…人の男に手つけるとは…

 最低、私。

 嫁とは別れるつもりとか言われたけども…

 いらない。

 人のもんはいらないよ。

 そんな言葉きいても嬉しくなかったのは本気で好きじゃなかったのかも。

 頼れる人がいてほしかっただけなのかも、あの時の私。

 どうせうそつく男はまたうそつく。

 捨てて正解だ。

 そう思わなきゃつらい恋になっちゃうしね。

 みじめになるのはホント嫌だ。

 いやだいやだ。

 あぁなんか携帯もっても意味ない気がする。

 誰も連絡こない。

 都会で友だちできなかった、てことなんだろうな。

 嫌いだった田舎が今はやけに落ち着く。

 家から出て近くの浜の公園のベンチに座ってひとりウォークマンで歌を聴いてる。

 冬の晴れはこんなに気持ちが良かったんだ。

 松原の木陰が風に揺れて光が踊るね。

 海からの西風はすこし冷たいけども穏やかで優しいし。

 潮の匂いってこんなんだったのか、てね。

 磯の香、最高っだ! みたいな。

 …。

 自分、この町好きなんだな、本当は。

 生まれたとこだもん、嫌いなわけなかったんだ。

 なんで都会にでたがったりしたんだろう、て

 いまさら悔やんでもそれはただの言い訳か。

 失敗してにげてきたから思うんだな、このいいわけがましい気持ちを。

 まぶたを閉じて冬の空を仰ぎ見る。

 目の前がまっかに感じる。

 あそこに太陽があるんだろうか。

 子供の頃、よくこんなことして遊んだっけ。

 ぱっと目をあけると太陽直視してくらくらして、なんかまっしろな世界になって…

 一瞬ひとりだけの特別な空間にいる、なんて気がして幸せ感じてた。

 けども目が慣れればやっぱり現実で、

 あぁやっぱ自分は特別じゃなくどこにでもいる子でつまんないや、とか感じて悲しくなったりして。

 でもさ、太陽ってすごいな。

 ぬくといよ。

 全身がほてるほどあたためられる。

 冬でさえ太陽のぬくとさ、肌に伝わるよ。

 足元におちてた松の枝なんか拾って地面にいたずら書き。

 これも子供の頃よくやったっけ。

 あの頃はアニメのキャラ描いて似てないとかいわれ腹立ててたな。

 で、今の私が書くのは…

『彼氏がほしい』

 ははは、ばかすぎる。

 30過ぎの女ひとりで地面にこれかくのってイタすぎ。

 化粧もしないで、パーカーに迷彩柄のパンツはいてて、まるでそこらの男の子みたいな女だし。

 でも冬の公園、こんなに観光客のカップルが公園ぬけて海岸へと向かう姿みてたら…

 うらやましくなっちゃうのしかたないよね。

 ため息しかでてこないよね。

 聴いてる曲がバラードならなおさら、だよね。
 
 帰りにコンビ二寄ってチューハイでも買い込むかな。

 コンビニに同級の花子がパートでいるけども、レジにいなきゃ目をあわせないでさっさか買い逃げできるら。

 やっぱ地元の同級生にはまだちゃんと会いたくないし。

 てか、長話になるのやだし。

 向こうは結婚して子供もいて、「あれ? 真由元気? なにしてるん?」とかわざとらしく聞かれるのやだし。

 とくに仲良くないし。

 無視したいし。

 自分がちゃんとしてればそんなこともおもわないんだろうけども…

 無職でニートでひきこもりで…なんていえないじゃん。

 毎日ネットしてるんだよね~、とか言えないじゃん。

 いい歳こいてなにしてるん、とか思われちゃうのいやじゃんね。

 それでもチューハイのみたいからコンビニ行くけども。

 お気に入りのやつ、この町だとあそこのコンビニしか売ってないし。

 あんずのソーダー味。

 あれが一番好きだ。
 
 行ったら、3本くらい買い込んどくかな。

 しかし、びくびくするほどには…知ってる人に会わないもんだ。

 さすがさびれてる田舎。

 町でてくときもう少しにぎやかな気がしたけども…、いやこんなんだったかなぁ。

 ま、いいや。

 人に会わないならそれでいいや。

 観光客は人にあらず。

 どうせすぐいなくなる人たちだもん。

 気にならないや。

 東京じゃみんな無視して生きてたし。

 それと同じこと。

 知り合いじゃなければどうでもいい人間だ。

 とはいっても、こんななんもない町になんでくるんだろ。
 
 温泉?

 もっといいとこあんじゃんね。

 ここでなくても。

 景色?

 たしかに駿河湾のぞむこの海岸はキレイだけども…

 ここ富士山みえないし、とくにメインあるわけもないし。

 伊豆ってだけで満足できるもんなんだろか?

 観光てのあんましたことないから、そんな気持ちわからないや。

 この町と東京の一部分しか知らない私。

 旅行行きたいとも思わない。

 なんも楽しくない日々を過ごして、ただやりすごすことだけ覚えて…

 今ここにいるだけ。

 それだけが自分。

 そんだけの自分。

 ちょっと涙でてきそうかも。
 
 悲しい曲のせいかもしれないけども…

 そっか、くだらない人生すぎたな、この10年。

 ゆっくり考えることもいやになってたな。

 認めることしてこなかったな。

 もう一度瞳をとじて今を忘れよう。

 冬の風を深呼吸して太陽の光をあびて、遠くに見える青い海と空に吐きだそう。

 思いっきり思いっきりっ吐き出してやる。

 しばらく目をつむって頭の中からっぽにして歌だけ聴いて切ない自分を受け入れよう。

 そうすればきっと…

 気がすこし晴れるだろう…、か。

 

 
 どれくらいたったかな。

 目を閉じてぼーとしてた時間。

 思考停止した分、なんだか気持ちいい気がする。
 
 やっぱ幸せな時間送ってんだな、そう思えた自分。

 みんな働いてるのに贅沢してるよ、自分。

 そう考えれば今の状態も自分にはいいもんだ。

 母さんはいい迷惑だろうけども…

 ゆるしてね。
 
 よし、気分が良くなったからゆっくり目を開こう。

 どんだけまぶしくなってるのか楽しみだ。

 きっとまっしろな世界が見えるはず。

 現実を見つめるスイッチはいるはず。

 自分がんばれるかもしれない気がしてきたし。

 公園のひだまりは気持ちがいいだけじゃないんだ、て思えるよ。

 のどかな田舎ばんざい、だね。

 さぁ、目をひらいて…自分

 !

 て、おいっ、

 私はおもわず聴いてたヘッドホンを取り外した。

「ちょっっ、のぶっあんたいつからとなりにいたんっ!?」

「ん? だいぶ前かな」

 …驚きすぎて言葉がすぐにでてこない。

 目開けたらとなりに人座ってんだもん。

 それだけでも驚くのに、相手がのぶだからなおさらだよ。

 まさか知った顔がとなりにあるとはね。

 てかてか、あほかっ。

 ふつう声掛けるとか、肩たたくとかすっだろがっ。
 
 …い、いや、こいつはそんなんするやつじゃないか。

 そうゆう性格だった。

「あんたちょっとなにしてるの? 仕事は? 今日平日でしょうが」

「ん? オレ? 散歩中。

 仕事は…、ぼちぼちしてるよ。

 ま、マイペースってやつ」

 のぶは遠くの海見ながらあいかわらずのそっけなさで言った。

 いやそっけないんだけども…いやな言い方の感じじゃない、のぶ独特の間というか…

 てか、かわってないな、この子。

 子供の頃からこんなんだったけな。

 5歳年下なので私がいばって子分あつかいで連れまわしたっけ。

 懐かしい。

 中学行ってから部活とか高校受験とかいろいろあって小学生ののぶと遊ぶことなくなっちゃったけども。

 高校入ってもまだのぶ小学生だったしねぇ…

 5歳ってホント離れてるよなぁ…いま思えば。

 ははは。

 東京ではアルバイトしてたとき5歳離れてる下の子でもぜんぜん気にならなくて友だち感覚で付き合えたけどもなぁ…

 やはり地元戻ると子供時代知ってる分、5歳差の重みが…

 くるね、うんうん。

 そういやのぶに会ったの父さんの葬式以来か。

 あの時はたくさんの人きてくれて田舎のすごさを思い知ったな。

 いや父さんの人脈か。

 うちの同級生も数人わざわざ来てくれて、みんなに感謝したっけ。

 田舎っていいな、とか葬式でちょろっと思った気も…あったっけかな。

 ということは、

「3年ぶりくらい? のぶと会うの?」

「4年かな」

 …4年か。

 そか。

 父さんの死んだ年数も忘れるだめなやつだなぁ、私て。

 情けない。

「で、…なんでのぶここに?」

「散歩」

「いやそれはわかったから。 

 そうじゃなくて、なんで私のとなりに黙って座ってたのか、とね」

「寝てたから」

 …うんん、寝てたんじゃないんだけども。

「よだれたらしてたし」

「! 

 う、うそつけっ私寝てなかったしっ」
 
 といいつつ、念のために口元を拭く私って…

「ん、うそ」

 しかもあっさりうそときたもんだ。

「のぶ、あんたねー。

 話すときは人の顔みなさい。

 たくっ海みながらひょうひょうとうそつくなってば」

 そういったらのぶがこっちを見た。

 やばい、こいつ顔カッコいく育ってたっけ。

 まともに見たらはずかしくなる。

 私、残念なことにかわいく育たなかったから…

 しかもふけたし。

 化粧してないし…

「やっっぱ、こっち見んな」

 おもわず私はのぶの顔をぷいと左手で押してまた海の方を向かせてしまった…

 のぶは足元に置いてたビニール袋をがさごそとさぐって何かをふたつ取り出した。

 !

 私はさっきかいた落書きを足であわてて消した。

 …たぶん見られて読まれたはず。

 でものぶは気づかないそぶりで、

「ん」

 そいうって私に缶コーヒーをくれた。

「お、気が利くじゃん。

 やっぱこのコーヒーだよね~

 これ以外は私飲まないの覚えてんだ、えらいえらい」

 ま、覚えてるというかは自分がのぶにこのコーヒーばかりを子供の頃買いに行かせては「これしか飲んじゃダメ」とかいってたからだと思うけども…

 小6の私は缶コーヒー飲むのが大人だと思い込んでて、小2ののぶにも缶コーヒー飲ませてたっけな。

 小2にコーヒーって…

 申し訳なかったな、今思えば。

 でも、まぁ…のぶもちゃんと飲んでたし、いっか。

 ははは。

「で、のぶは仕事なにしてたっけか?」

 前になにか作ってるとか言ってた気がしたけども、なんだったっけかな~と。

 私わりと忘れっぽくて…葬式のときに聞いた気はするんだけども。

「ん?

 自分とこの工房でガラス細工つくってる。

 ガラス職人てやつ」 

「おーすごいじゃん、職人さんだね~

 てか、工房って。

 あんたっちってガラス屋さんじゃなかったのに自分で建てたの?」

「ん~
 
 建ててないよ。

 家ン中ちと改造して工房にしてる。

 工房っていってもオレひとりでちまちましてるだけだし、そんくらいで十分」

「そっか、あの家をか~

 てか、おばぁちゃんにおこられなかったん?」

 のぶんとこは両親いなくておばぁちゃんと二人暮らしだったし。

 記憶ではそれほど大きな家じゃなかった気がするし。

 いくらかわいい孫といっても家の中改装されたら…ちと抵抗あったんじゃないだろうか。 
 
 そういやのぶの家って町外れの小山の上だったよなぁ。

 よくあんなとこからうちへと遊びにきてたな、子供の頃。

 うちのおばぁちゃんとのぶんとこのおばぁちゃんが同じホテルの清掃員だったから仲良くしてたのは覚えてるけども。

 うちのおばぁちゃんは小5のとき亡くなってるし。

 そういやのぶの家遊びに行ったのは数えるほどだったなぁ。

 なにせあの家行くまでにかなり急なコンクリートの坂あがってかなきゃなんなくて、マジ勘弁って思ってたもん、私。

 これまた今思えばガキんちょののぶはよくもまーあんなとこから通学してたな~と。

 そのわりにはこいつ筋肉質なごつい体になってないんだよねぇ。

 すらっとしたイケメンになっちゃって。

 都会にいたら雰囲気あるイケメンモデルにでもなれそう。

 と、いっても、もう27歳じゃ遅いか。

 10年前に家出たとき声かけてやればよかったかな。

 したら芸能人になってたかもね、のぶ。

 田舎にはもったいない顔してるし。

 性格は…田舎向きか。

 ははは。

 都会じゃたぶんのんびりすぎて生き抜けないだろうな。

 私が無理ならなおさらのぶだと無理だろう。

 そんなこと考えてたらのぶが、

「ばぁちゃんさ、

 今日おばさんたちのとこ行くからもう工房のことはおこられないよ」

「ぇ? どうゆうこと?」

 私が聞き返すと海見ながら缶コーヒー一口すすってのぶが

「この頃健康が気になるらしくてさ、

 オレと一緒じゃ不安だからって。

 で、ひきとる、て親戚のおばさんがさ。

 九州からきてんだ、今」

「おばぁちゃん、それで行くて?

 うそ、行かないでしょ?

 てか、いまさら九州て…」

「ん~

 行くってさ。

 たぶん、ばぁちゃんオレに迷惑かけたくない、とか思ってんだと思う。

 自分からおばさんとこ電話したっぽいし」

「…のぶ、それでいいの?
 
 てか、とめなよ。

 行ってほしくないんでしょ、本当は」

 のぶとおばぁちゃんの関係子供の頃から見てて知ってるから、絶対嫌だと思う。

 きっと嫌だと思う。

 あんなになかよくって孫と祖母というより母子そのもののような目に見えないけども確かに感じられる強い絆、ふたりからでてたもん。

 鈍感な私でもそれはわかる関係だった気がする。

 でも…

「ん~

 いいかな。

 これでいいかな、てさ。

 ばぁちゃんさ、オレがひとりぽっちになったとき自分が育てるからっていってさ…

 引き取ろうとしたおばさんたち追い返してほんとに今まで育ててくれたんだ」

「だったら、やっぱ」

「ん~

 だからさ、

 自分で決めたんなら誰が言っても聞かないてこと。

 オレはばぁちゃんのこと好きだから、ばぁちゃんの気の済むようにしてやろうと思う」

 そういってまたのぶは海を見つめながら缶コーヒーをすすった。

 …なんだか、家の中ひとりぼっちで気晴らしに公園にでてきた私だったけども。

「よし、のぶ家行くよ。

 おばぁちゃん九州行っちゃうんでしょ?

 あんたこんなとこでくつろいでる場合じゃないじゃんっ。

 引越し準備とか…うんん、なんかやることあるっしょっ。

 てか、少しでも長くいなよ、一緒に。

 九州って遠いーじゃんっ

 私もあいさつしときたいし、
 
 ね」

「ん」

 私はのんびり座ってるのぶのそでをひっぱってたたせ歩き出した。 
 
 いざ、のぶの家へ!

 …

 てか、のぶ背高っ。

 並んで歩くとまるで大人と子供くらいの背丈の差だよ。

 自分、せめて160は身長ほしかったかも…156ってわりあいちびだ。

「のぶ、いま身長いくつ?」

「ん?

 75」

 約20センチの差か…

 厚底はいてこればよかったかな。

 時代遅れのくたびれたブーツ捨てられずにまだとっといてあるし。

 あれをはけば多少は…見栄えもつりあうだろう…後ろ姿なら…

 いや、あの坂のぼるんだった、これから。

 運動不足なのに。

 てか、あの坂じゃおばぁちゃん大変だったろうな、いままで。 

 こけたらそのまま下までいっちゃいそうなほどの急さかげんだもん。

 そりゃ平地に住みたくなるわな、年寄りじゃ。

 …

 ダイエットには効くだろか。

 毎朝のぶの家の坂のぼりくだりしてみっかな。

 へたな本やDVDなんかよりかは良さそうだ。

 ははは。

 …続かないだろうけども。