いつも君はそっぽを向く | 忘れちゃうひととき

忘れちゃうひととき

青臭い駄目人間の、イカ臭い日常を、小便臭い文章で、つらつらつらと書き綴っていく予定です。それ以上でもそれ以下でもそれだけでもありません。

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本日は晴天なり。
東京に吹く風は暖かく、さながら春の陽気である。

さて、突然だが、数週間前から僕は、「可愛い女の子と一緒に生クリームが乗っかったケーキを食べて、苦い珈琲を飲んで、煙草をプカリプカリと吸って、楽しくお喋りを交わして、『幸せだなァ。僕は君といる時が一番幸せなんだ』と加山雄三のように呟いてみたい症候群』の発作に見舞われている。
病名が著しく長いので、以下、便宜上「加山雄三症候群」と表記する。
加山雄三氏の関係者各位は、このブログをどうか見ないでいただきたい。

「現代社会に巣食う闇が生んだ奇病」ともいえるこのビョーキが、既に国から難病指定を受けているのは周知の事実であり、患者数は若い男性を中心に数千~数万人ともいわれている。
僕以外にもこのビョーキに苦しんでいる人が、日本にはたくさんいるのだ。
治療方法の早急な確立が待たれるところである。

重い発作の症状に苦しんでいた僕は、今日こそお出掛けをしようと、某女性に宛ててメールを一通綴った。
「仕事が終わったら副都心線でそのまま渋谷まで来て、一緒にケーキでも食べませんか(はぁと)」
送信。
ほどなくして、返事が来た。
時間を見るに、煙草を吸いがてら小休憩でも取ったのだろう。
「面倒臭い」
おお、ジーザス!
センテンスの終わりには句点を添えるという、日本語の基本文法すら無視した、シンプル極まりないメールである。
悲しみに打ちひしがれた僕は、即座に
「御意。」
とだけ返した。
日本語の基本文法を遵守するあたりに僕の気質が表れた、美しくも悲しい一文である。

こうなったら一人でも行ってやろう。
一人で行くのでは、前述した「加山雄三症候群」の発作を完全に鎮静化させるには至らないが、贅沢を言っていられる状況ではない。
このままでは、いつ『ドグラマグラ』の主人公・呉一郎のように発狂して「…………ブウウーンンンーンンンン…………。」的世界に没入してしまうか分からないのだ。
僕は拳を固く握り締めた。
よし、一人で行こう。

…………ブウウーンンンーンンンン…………。

結論から書こう。
僕は出掛けられなかった。
支度を始めた頃に、仕事のメールが届き、急遽対応しなければいけなくなった。
そして何よりも、クレジットカードの支払いを忘れていた為、渋谷に行っても買い物が出来ないことに気付いたのだ。
東京事変『スポーツ』と川本真琴『音楽の世界へようこそ』を購入したかったのである。
出来ればレミオロメン『花鳥風月』とcapcule『PLAYER』も買っちゃったりしたかったのである。
(上記のアルバムを買われた方、感想を教えてくれたもう)
一人で赴く以上、「CDを買いに行くついでにカフェに立ち寄り、珈琲のついでにケーキも食べてみた」という名目は必須となる。
こればっかりは絶対に譲ることの出来ない。
綿矢りさがこれを知ったら「男が一人でケーキ? スイーツ(笑)? ハッ。っていうこのスタンス。」などと背中を蹴られてしまいそうだが、こればっかりはどうしようもないのである。

そんなこんなで、僕は今日も僕の街から出ることが出来なかった。
ささやかなる抵抗として、駅前のフレッシュネスバーガーに来て、アイス珈琲をストローでちうちうと飲んでいるのだが、胸に去来するこの言い知れぬ虚しさは何だろう。
何だろう、嗚呼、何だろう。


♪今の気分的一曲
言いたいことはいつも / スネオヘアー