演習部隊は、露営場所に進んだ。

 伊藤中尉は最後尾を進み、神成大尉は急いで先頭に向かった。

 

 「而して、前夜の露営地に行っても止まらず、之を右に見つつ行進を継続する。私は何故に停止せざるや一向判らず後尾より続行したが、唯不審に堪えないのは露営地附近よりポツポツ橇米叺及び釜等が棄てられつつある……何うしたことであろうと後で聞いてみると、山口大隊長は佐藤特務曹長が田代の道を知っていると話したのを軽率に信用し、この雪中行軍の指揮官たる神成大尉に相談せず『然らば案内せよ』と命じて、暗夜田代に向け行進したが、進路を誤り、駒込川の本流に迷い込み一歩も進むことができなくなったのである」(伊藤中尉の口演内容を筆録したもの(郷土誌「うとう」第13号)から)

 

 演習部隊は駒込川にぶつかったのだから、あとは上流に進めば田代元湯、新湯に到着することができた。

 だが、部隊は下流方向に進み、そして鳴沢を前嶽方向に進んだのだった。それは、田代元湯、新湯とは反対方向となる。

 結局、誰も田代元湯、新湯が駒込川沿いにあることさえわかっていなかったのである。(来週に続く)

 

叺(かます):ワラの袋