ダークヒーロー ビギニング  vol.40 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

卒業写真は、全員写真とスナップ写真と顔写真に胴体部分をイラストで描いてユーモラスに表現したページで構成されていた。


その内 顔写真+イラストの部門は各クラスの生徒が受け持つ事になっていてその係を買って出たのが、例の高慢高飛車女だった。


受験勉強で忙しい中そんな係をやりたい生徒は、他にいなかったので高慢女がその係に決まった。


あいつは、余裕で受験に受かる自信があったので暇つぶしに引き受けたんだろうとおれは思っていた。


写真の係が決まって1週間程経った頃おれと高慢女が、職員室に呼ばれた。

おれ達は、職員室に入って担任教師の席まで行った。


「この原稿の事だけど...」と担任は机に置いてある原稿用紙を見ながら言った。

おれが何の原稿だと思って見ると顔写真+イラストの原稿用紙だった。


高慢女は、さすがに絵を習っているだけあってなかなか上手く描けていた。

しかしおれは何処に居るのかな?と原稿をよく見ると他の生徒達と掛け離れた空中を鳥の姿で飛んでいて「珍鳥アホー鳥」と書いてある。

そしてそのアホー鳥の後ろに「アホー鳥の弟子のボケ鳥」として担任教師も鳥の姿で描かれていた。


「これは、どう言う事?」と担任が高慢女に聞くとあいつは「別に深い意味は無いです 嫌ならその部分は描き直します」と悪びれもせず言った。

「卒業写真がこれってちょっと酷いと思うよ」と担任は言ってから今度はおれに「君は、どう思う?」と聞いた。

おれは答える前に「フフン」と鼻で笑ってから「だから前にも言ったでしょ こいつは間違い無くおれに惚れてるんです」と言ったら担任と高慢女が同時におれの顔を見た。

「おれだけ高い空を飛んでいると言うのは、こいつにとっておれは他の生徒と違って特別に高い存在なんですよ」と続けたら「何で私がこんな奴!」と高慢女が目を吊り上げて言った。

「素直じゃねぇなぁお前も」とおれが追い打ちを掛けるように言うと「アホッ!」とあいつはヒステリックに怒鳴りながら職員室を出て行った。


「原稿あのままでいいの?」と担任教師がおれの顔を覗き込むように言った。

「おれは、気にしませんが先生嫌なら先生の分は、描き直してもらったらどうですか?」とおれは逆に先生の顔を見詰め返した。


「君がいいなら私もそのままでいいよ」と彼女は皮肉な笑みを浮かべて言った。

そしておれが「フンッ暇な奴だ」とおれがあいつの事を言うと担任が「彼女は案外本当に君に構って欲しかったんじゃないかな?」と呟いて「考えたら今うちのクラスで君と彼女が一番平常心を保ってるような気がする」とも言った。


確かに受験を目の前にしてこんなくだらない絡み方をして来るあいつが何と無く真ともな気がした。


周囲から孤立した思いをあいつも心の何処かに抱いていたのかも知れない。


おれは、初めてあの高慢高飛車女と心が少し通じたような気がした。



結局 卒業写真には、原稿通りおれはアホー鳥で担任教師はボケ鳥のまま載せられた。


後から聞いた話だが、この卒業写真については職員室内でかなり問題になったらしいが、そんな事はおれの知った事じゃない。