水郷廻り(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

人を見た目で判断してはいけない。
見た目と中身のギャップのある人間は多い。

それを見抜く事も武道に於いては、必要だ。
だから普段から見た目の先入観に捕らわれないように心掛けて置きたい。

随分前になるが おれは、近江八幡の水郷巡りの小舟に乗った。
シーズンオフのウイークデイだったので他には20代前半と思えるカップルが乗っているだけだった。

そのカップルの彼氏の方が異様なファッションで 頭は、金と黒のツートンカラーの髪をハリネズミのように立てて 耳と鼻にピアスそして細いサングラスを掛けている。
服装は無数に鋲が打ち込まれた黒皮の上下そしてベルトの辺りで鎖がジャラジャラ鳴っていた。

おれは、北斗の拳の悪役みたいな鬱陶しい奴と乗り合わせた事で気分を害していた。

船頭も怪訝な顔でその男を見ている。

彼女の方は、アイドル系の可愛い女だった。
これは得てしてよくある話だ。

小舟が岸を放れた時からハリネズミが彼女相手にやたらに大声で喋り始めた。
これがまた 聞くに堪えない下らない話ばかりだった。

おれは、このハリネズミを水郷に投げ込みたい衝動を何とか堪えていた。


後編に続く