友よ(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

現在おれが生業としている柔術や整体の仕事は、仲間や友達とは無縁だ。
元々 協調性のないおれには、おあつらえ向きの職業だと言える。

おれの協調性のなさと遅刻癖は、子供の頃から現在に至るまで治らない。

遅刻と言えば思い出す男が居る。

中学二年の1学期初日 その日も おれの目前で校門は閉ざされた。
「お前二年になっても遅刻か!しかも初日から」と ゴリラみたいな体育教師が怒鳴った。
朝っぱらからうるさい奴だと思いつつ校門の方へ目をやると 校門にもたれて立っている男が居た。
この男も 校門前の常連で よく見る顔だった。

おれ達は、二人並んでゴリラ教師に遅刻の理由を聞かれた。
「おれは、夜行性なんで朝は弱いって前にも言いましたっけ」と おれが言うと もう一人が「フッ」と ゴリラを小馬鹿にしたように笑った。
ゴリラは、激怒して「お前ら 舐めてんのか!」と おれに掴みかかりそうになったが そこへ国語教師が止めに入ったのでその場は収まり おれ達は、自分の教室に向かった。

いざ教室に入ろうとして おれ達は、顔を見合わせた。
二人は、同じクラスだった。

おれが「今日は妙に縁があるなぁ」と 言うと奴はまた「フッ」と クールに笑った。

これが、おれとあいつの出会いだった。


後編に続く