『森が消えれば海も死ぬ』 | hakko1019のブログ

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「発酵水」
母なる海の恵みの日本在来の天然海藻(緑藻類・褐藻類・紅藻類)
およそ30種類を独自製法で長期自然発酵させて、手づくりで原液づくりをしています。



駿河湾の海岸に打ち上げられた海藻群 静波海岸にて


黒潮の駿河湾の海 背景左手は日本平 焼津和田浜にて


『森が消えれば海も死ぬ』
2020年06月16日 12時25分投稿分の再投稿

私は発酵水という水(言い換えると海の酵素や発酵飲料など、いろんな呼び方ができます)を醸造しています。
この水を醸造するときになくてはならないのが、その元になる「海藻腐植化原料」です。

つい先日のブログ「発酵水の新たな概念」などでもこの原料のことについてはお伝えしていますが、今日はまたちょっと視点をかえて、お話したいと思います。

先ずこの原料は海で生育した海藻群が海岸に打ち上げられて、そこの特別な環境の諸条件下で、気の遠くなるような年月をかけて海と大地の微生物群によって常温自然発酵してつくられます。
さらに、それに加えて、天・海・地の大自然の様々な場のエネルギーが付加されて「海藻腐植化原料」が出来上がります。

ではその前の一次原料である海藻群はどのようにして生育し、繁茂していくのかというのが今日のテーマの一つとなりますが、それは、この発酵水の原料がつくられるためには、海だけという環境ではできないということです。

海藻が生まれ育つためには豊かな海が欠かせません。
でもその豊かな「海」は、海藻を育む豊富な栄養分を運んでくる「河川」、そしてその豊かな栄養分を生み出している「森」とのひと繋がりの生態系が不可欠なのです。

普段、細分化した思考法で捉えて考えることに慣れ親しんだ私たちですが、海と川と森がひと繋がりで環境場、生態系場をつくっていることに気づいていただくきっかけになることを願い、松永勝彦さんの著書から引用してお伝えいたします。


『森が消えれば海も死ぬ』松永勝彦著 講談社

ーー引用開始

海さえあれば、魚介類は豊富に生育できると考えてはいないだろうか。
海と陸(森林)とは別個のものだと考えてはいないだろうか。

つまり、これまで私たちは、森・川・海というひと繋がりで生態系を見てこなかったのである。
また、このことは、陸と海を結びつける科学があまり発展しなかったことにつながっているわけでもある。

昔から漁民たちは、魚介類を増やすためには湖岸、川辺、海岸の森林を守ることが大切なことをよく知っていた。
魚を集めるということで、この森のことを魚つき林という。
森の栄養分が海の生物を育てるのである。

日本では湖、河川、海岸近くの魚つき保安林は28,000ヘクタール(1992年)で、これは日本の全森林面積のわずか0,1%にしかすぎない。

沿岸海域は外洋水と陸水との混合域であり、沿岸海域を知るためには、外洋水をはじめ、河川水、森林の機能などを知らなければならない。

これまで森林、海、地球環境に関するそれぞれの本は数多く出版されている。
しかしながら、三者は密接に結びついているにもかかわらず、結びつけの研究がされていないため、この関係をわかりやすく解説した本は出版されていない。

本書の目的は、森林が海の生物生産と深く結びついていること、森林は私たちの身近な環境においても、さらに地球温暖化などの地球規模の環境においても種々の役割を果たしていることを知っていただくことを主眼にしている。

第1章 森の豊かさが海を育てる

■海の森=海中林
海藻の生育場所を見ると、種子植物で砂場に生育するアマモを除けば岩場にしか海藻は生育できない。
スガモは岩や岩盤に砂泥が堆積した場所で生育する。

北海道、東北の太平洋側の岩場には数メートルから中には10数メートル以上まで生長するコンブが、本州ではアラメ、カジメ、ホンダワラなど多くの海藻が生育している。

二枚貝(アサリ、ハマグリなど)はプランクトンを餌としているのに対し、ウニやアワビは岩場で生育するコンブ、カジメ、アラメ、ホンダワラなどの海藻を餌として生きている。

また、魚によっては海藻にしか産卵しない種類もある。
例えば有名な秋田県のハタハタはホンダワラにしか産卵しないし、北海道では水揚げが激減し幻の魚といわれて久しいニシンもコンブやホンダワラなどの海藻に卵が着床するといわれている。

海藻の密生した状態を海中林というが、歴史的にみても、海中林は陸の森林の大先輩である。
陸の森林土中では極めて多種の生き物が生存しているのと同様に、海中林でも多種の生き物が生息し、生態系を維持しているのである。

孵化した稚魚は成長段階により岸から順に沖にむけて生活環境を変えるが、その成長段階でこの海中林が必要であるといわれており、餌場としてはむろんのこと、外敵、荒天から身を守るなどの役目を果たしている。

このように海中林は単にウニやアワビの餌の供給のみならず、産卵場、稚魚の生育の場として極めて重要な働きをしている。
さらに、海水の浄化とプランクトンを増やす役割を担っている。

葉についた汚濁有機物質は分解されて海水を浄化し、枯葉は微生物によって分解され、プランクトンを増やす栄養素を供給するのである。
また、ウニやアワビなども排泄する有機物質は、バクテリアにより分解され、海中林での物質循環が成り立っているのである。

〇森が貧しいと海も貧しく
■生物的風化による腐植土層
森林地帯では枯葉、枯枝が微生物によって分解を受け、これらが破砕された細かい粒土の鉱物と混合した、いわゆる腐植土層が形成される。
その上層には枯葉が堆積した枯葉層があり、腐植土層からの水の蒸発を防いでいる。
この腐植土層の形成が海の生物に極めて重要な因子となるのである。

微生物が枯葉などの有機物質を分解するとき、無機酸(炭酸、硝酸など)や有機酸(シュウ酸、酢酸など)ができ、これらが鉱物に作用し、鉱物の分解を速める。

また、有機物質は多くの金属と結合する機能を持つ腐植物質を生成し、鉱物を分解するのである。
この生物的風化が、森林が海に果たす役割としては一番重要な働きをしているのである。

〇森と海をつなぐ河川
■コンブの質は河川による
海藻の林、すなわち、海中林が消滅してしまえば、ウニ、アワビ、魚にまで影響し、その海域は漁場としての価値が失われる。

次にコンブと森林の関係について述べよう。
コンブは一等から雑コンブまでに分類され市販されているが、等級はコンブの厚みとか、黒光りした色つやのよさによってきまる。

コンブは真コンブ、利尻コンブ、三石コンブ、細めコンブ、長コンブなど多くの種類があり、それぞれの用途によって使い分けされる。
例えば真コンブは、だしコンブとして最高級品とされているし、煮物用は三石コンブである。

北海道日高支庁の浦河町に井寒台という地域があるが、ここのコンブは最高級品とされている。
この海域には数河川が流入しており、森林の栄養素が河川を通して海に運ばれ、コンブの質を高めていることはいうまでもない。

一方、昔は一等コンブの産地であった海域でも、今日では三等コンブになってしまった海域もある。
この海域にも河川は流入しているが、漁師にコンブの質の低下した原因を聞くと、昔は河川水量も多かったこと、河川の上流域には豊かな森林があったが、伐採などの人手が加わったためだと思うと話していた。

この河川の鉄濃度を測定したが、日本海側の河川同様低濃度であったことから、経験による漁師の勘は正しいだろうと私は判断した。

■高い沿岸域の生産力
河川が流入している沿岸域の生産力(プランクトン量)は外洋に比べて著しく高い。
河川の影響する沿岸域の生産力は400グラム炭素程度である(1年に平方メートル当たりの炭素400グラムを生成する)。

生産力とは植物プランクトンの主成分である炭素が海面1平方メートル当たり、1年間に何グラム生成されるか、つまり、植物プランクトンがどのくらい増えるかという指標である。
この数値が大きいほど、プランクトンはよく増えるということだ。

函館湾には多くの河川が流入しており、その湾での主な漁獲物はホッキ貝である。
実際に函館湾では、1平方メートル当たり数個から数十個生育しており、ホッキ貝、つまり漁師は河川の恩恵を受けていることが明白である。

気仙沼湾でもコンブ、ワカメ、ホタテの養殖が沿岸をビッシリ埋めつくしている。
これらを生長させる栄養素がどこから供給されるかというと、湾に流入している河川からと推測される。

このように、陸の森林が豊かなら、海の生物が豊かになる。
逆に、陸の森林が貧しければ、海の生物まで貧しくなるのである。

〇植物プランクトン・海藻に欠かせない鉄分
■似ている血清成分と海水成分
人間の血液成分と海水成分とはよく似ており、このことも生命誕生が海であったといわれるゆえんである。
重金属(比重が4以上の金属)中、鉄が人間の体内で一番多いが、これは海で生命が誕生したとき、海水中で最も濃度の高い元素であったことに起因していると思われる。

人間の体内では、鉄は赤血球中のヘモグロビンと結びついて身体の各組織に酸素を運ぶ役割をしている。
多くの重金属は酵素の中心元素であったり、酵素の活性を高めるといわれている。

海水中では植物プランクトンや海藻を増やさなければ、それに続く貝、魚は増えることができない。
海水中では窒素は安定した硝酸塩、リンはリン酸塩という無機の形で水に溶けている。
これは生体を構成するのに必要なタンパク質、ATP(アデノシン三リン酸)などを生合成するのに不可欠な成分である。

藻類(植物プランクトン)や海藻がこの硝酸塩を取り込むと、これを還元しなければならず、その還元には硝酸還元酵素が必要であり、鉄はこの酵素に大きく関与しているからである。

ほかに、光合成をする生物にはクロロフィルなどの光合成色素が不可欠であるが、これらの生合成に鉄は極めて大きく関与しており、鉄なしではこれらの色素は生合成されない。
陸上の植物も全く同様で、植木の土壌に釘をさしたりするが、これは鉄を供給する意味で理にかなっている。


第4章 森と海をよみがえらすには
〇山に木を植える漁民
■魚が戻ってきた!
北海道えりも岬の例が植林と漁場の関係を最もよく表している。
300年前のえりも岬は広葉樹の原生林で覆われ、すでにアイヌの人々がここで生活していた。

明治以降本州から入植者が増え、燃料として森林が伐採され、さらに放牧地の開拓などにより森林が失われ、また草地も家畜の過放牧や風や雨の浸蝕により年々荒廃が進んだ。

荒廃が進むにつれ、土砂が流出することにより、沿岸の根付魚(一生沿岸で過ごす魚)をはじめ回遊魚も、そこを回避するようになり、漁獲は減少の一途をたどった。

一方、コンブなどの海藻も岩盤が泥で覆われて根腐れを起こして採れなくなってしまい、生育の場の消滅とともに、魚の水揚げが激減し、かつての好漁場が消滅したのである。

これは、森林伐採により、腐植土層が流出したために下層の無機質層が風雪によってあらわになってしまったものである。
草木1本もない赤土のハゲ山は「えりも砂漠」といわれていた。

また、この岬では平均風速が秒速10メートルを越える日が年間270日くらいもあり、赤土は沖合10キロメートルにも飛散し、ちょうど瀬戸内海の赤潮のごとく海面を染めていたのである。

この微細な赤土はコンブに付着すると、コンブは枯死してしまうため、岩盤が泥で覆われていない沿岸でも、この赤土の飛砂により、コンブが枯死してしまったのである。
むろんコンブの消滅はウニなどの激減をもたらすことになった。

えりも岬の場合は、明らかに森林の伐採、それに伴う土砂の流出により漁獲が減少したことは明らかであり、漁獲の減少は森林の崩壊と断定できた。

昭和に入り、住民の強い要望で緑化事業は道庁によって実施されたが、昭和28年には浦河営林署に「えりも治山事業所」が新設され、えりも国有林緑化の第一歩を踏み出した。

この草本緑化は昭和45年にほぼ完了し、192ヘクタールを緑化した。
草が根づいたところから木を植える木本緑化を昭和29年から実施して、1992年には砂漠化した約70%に当たる131ヘクタールの森林が蘇っている。

このように官民一体となり半世紀をかけてやっと森林らしさを蘇らせたことになるが、森林らしさと述べたのは、森の10年は人間の1歳に相当するから、えりも岬の森林はまだ4~5歳の幼児にしか過ぎないからである。
かつての森林に戻すにはこれから数百年かかるともいわれている。

この緑化事業前後にわたる魚介類の水揚げ高は、緑化前に比べ現在は約250倍の水揚げがあるにもかかわらず、岬は魚つき保安林ではない。単に飛砂防備保安林である。
なぜなら、魚つき林の効能が世の中に認められていないからである。

緑化後、冬から春にはウニ、カニ漁を、夏にはコンブ、秋にはサケ、マス漁と海の資源回復によって一年中働くことが可能となった。

■“森は海の恋人”
最後に宮城県気仙沼の畠山重篤氏が代表を務める「牡蠣の森を慕う会」の緑林活動を述べよう。
畠山氏はカキやホタテ貝の養殖ひと筋に30年間漁業を営んでいたが、海が年々変化してきたことに気づいたのである。
それは、海の生物がわずか20年で著しく減ってきていることであった。

また、気仙沼湾に流入している大川の水量が極度に変動してきた。
雨が降れば、洪水のように水量が増加し、日照りが続くと水量が著しく減少してしまう。
この要因が上流の森林伐採によるものであることに気づいた。

仲間の漁師を中心に「牡蠣の森を慕う会」を発足させた。
そして1989年、大川流域にある室根山に第1回目の植林として苗木2,000本を植えたのである。

また、「森は海の恋人」のシンポジウムを開き、森林の意義、森林と海との関係など一般市民に啓蒙し、室根山の小学生を海に招き海と森林の結びつきを教えたり、畠山氏自身講師として講演活動を行っている。

ーー引用終わり

松永勝彦
1942年 三重県生まれ。立命館大学理工学部化学科卒業、大阪大学工学研究科終了。
1986年から北海道大学水産学部教授。森林が湖、沿岸海域の生物生産に果たす役割について、これまで研究を続けてきた。
研究は学生も教授も平等でなければ学問の進歩は止まるという信念で、人間と自然との共存をめざした研究を続けている。
1992年に創設され、環境の研究にたずさわる研究者に贈られる第1回環境水俣賞を受賞。

 

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