イマドキの児童文学って。 | 八角屋の「それってどうなんだろ」

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『杉森くんを殺すには』長谷川まりる くもん出版 

 

高校1年生のヒロは杉森くんを殺すことに決めた。杉森くんは道路をはさんで向かいに住む幼なじみだ。兄のアドバイスで、「なぜ殺したいのか」という理由と、悪事を決行する前に「やりたいことをやりきっておく」ためのリストを書くことにした。そしてヒロは、杉森くんを殺したい理由を書きとめながら、やっておきたいことリストを高校生活の中でひとつずつ実行していく。

 

物騒なタイトルにビビるカモしれないが、読んでいくと、なぜ殺さなければいけないのかが分かってくる。これ以上はネタを明かさないでおきます。

 

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この本は「悩める青少年」がターゲットなんだと思うけど、中年の私が読んでもひじょーに感慨深い。しんどいテーマを扱っているわりには、面白かったといってもいい。

 

ヒロの様子を静かに見守ってくれる大人たちがいて、ヒロのストレートな発言を聞いてくれる友人たちがいる。私が好きな「ちょっとだけ恋愛要素」も入っている。自分がヒロの立場だったらどうしただろうと考える。児童文学の棚に並べたままにしておくには、モッタイナイ一冊。