日没の早い季節だったので、明るいうちに帰って
きたかった。
『もう帰ってくるだろう』
きっといれ違いぐらいに帰ってくるだろうと思って、
私はブチの様子を見もせずに、バタバタと用意をして
玄関を出た。雨上がりの霧のかかったような夕方の畑の
風景に何故か殺伐としたものを感じた。いつもは感じたこと
のなかった凄然とした空気が襲い掛かって来るようだった。
夫が帰りを急いでいる姿が見えないかと見渡したが、
人影は見えなかった。
『急いで行って来よう』
私は濡れた道路を急ぎ足で歩き始めた。曲がり角に来た時
変な気持ちになった。
『帰ろうかな‥』
でも夫はもう帰ってきてる頃だろうと、そんな気持ちを振り
切って歩き始めた。何となく落ち着かない。いつもよりは
ショートカットのコースをに歩くことにした。
急いで帰っていると家から100メートルくらいの所で着信音
が鳴った。夫からだった。
『もしもし』
『ブッちゃんが‥』
『ブッちゃんが!?』
急いでリビングに行くと、ブチがフリースの近くの床に横に
なっていた。手足が伸びていた。