その家には15年間住んだ。
狭い庭に立派な楓の木と小高いはんてん木があり、いい気を
出してくれていて私は大好きだった。意外と木登りの上手な
ブチが時々楓に登り、太い枝に座って大きなかわいい目で
私を見おろしていた。ブチも私も若かった。
猫を飼っていると、持ち家でも団地住まいでは近所に
気遣うことも多かった。
結局もっと田舎の人家のまばらな田舎に引っ越すことにした。
運よく、古屋付きの土地が見つかった。今の家を売り、
古屋を解体して、新しく平屋をたてることにした。猫のことを
第一に考えての引っ越しだが、夫の好きな土いじりもできる。
引っ越しを翌月の終わりごろにと考えていたある日。朝から
はっきりしない曇り空で、洗濯をしようかなどうしようかな、
と思いながら結局洗濯機を回し始めた。でも洗濯が終わるころ
になると朝よりも暗くなってきた感じがした。
『しょうがない。家の中に干そう』
と思っていたら、夫が出がけに
「今日は雨降らんよ」
と言った。
夫はいつもパソコンで雨雲レーダーをチェックして出ていく
ので、そうなのかな~と、その言葉を信じて外に干した。