エントランスの扉が開くと
別世界に降り立った気分になる。
いつものホテル
ロビーに寛ぐ人たちの視線を感じながら
エレベーターで45階へと向かう。
フワアッと浮き上がるこの感覚が好き・・・
今宵待つのは、どんな方なのだろう?
それは期待?
それとも不安?
もう慣れているはずなのに・・・
今夜もまた
不思議な緊張感が私を包んでいる。
ドアを開け
出迎えて下さったのは初老の紳士
バスローブを羽織り
グレイヘアをかきあげながら
はにかんだ笑顔で
私に中へ入るよう促す。
「お世話になります。」
「私でよろしいでしょうか?」
初めてのお客様には拒否権がある。
だから、伺うのが礼儀・・・
何も答えずベットに誘い
私を抱き寄せ
いきなり唇を奪う今宵の御主人様。
「今夜は、お客様のモノになります。」
「どうぞ、お好きになさってくださいませ。」
耳たぶを噛まれ
思わず喘ぎながら
いつものように誓いを述べる。
これが私のお仕事だから・・・
果てしなく長い夜・・・
何度も、何度も逝かされながら
心の中で呼ぶ名は・あ・な・た・
他の男を受け入れながら
心の中で思っているのは
愛しい・あ・な・た・
どんなに身体が汚れても
男のエキスに塗れても
心だけは大切にしたいから・・・
お客様の愛を注がれ
御奉仕が終わるころには
外は雨。
窓を眺める私に
遠く聴こえるあなたの声
「良かったぜ。」
背後から抱きしめられ
うなじを舐め上げられながら吐息を漏らす私。
「別嬪さんやし、締まりがええ」
「また、たまに寄らせてもらうわ」
きっと、関西の方なんだわ・・・
そう思ったけど、訊くこともなく私は部屋を後にした。
「体に気い付けいや」
優しい言葉が心に刺さる。
まるで、降りしきる雨のよう・・・
冷たく、激しく私を責め立てる。
タクシーの窓から眺める東京の街。
ふと遠くに
あなたを見たような気がした。
幻かな?
闇の彼方に目を凝らしても
見えるのは
雨に追われる足並みばかり
「ただいま・・・あ・な・た・」
どんなに汚れていても
どんなに離れていても
心はいつも
あなたのことを想っています。
noteで、自分の過去を小説にして掲載しています。
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