まだまだ暑いですが、ちょっぴりマシになってきたような大阪ですが、いかがお過ごしでしょうか。
当院ベビーの方は比較的落ち着いており、なによりという感じです。
いつ何が起こるか分からないのがお産なので、もちろん気を抜くことはできないという素振りを
見せつつ、日々過ごしています。
それから不同意堕胎の罪に問われた小林医師が懲役5年を求刑されましたね。
医学的な因果関係はともあれ、しっかり罪を償ってほしいと思います。
さてと、依然として大きな問題です。
現代医学を支持する医療者から見ればね。
『 「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査
「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。
乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、
損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと
呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠は
はっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。
新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月
までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。これに対し、ホメオパシーを
取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、
レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。
約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、
和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。2008年の日本
助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が
講演をした。同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。
日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、
会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果を
まとめるという。
また通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、
ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。
日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。
助産師会の岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の
使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」と話している。
助産師は全国に約2万8千人。医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えて
いる。主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。
テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を
務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。
取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは自重せざるを得ない」
と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。
K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを
選んだという。
一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。
ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、「国民保健サービスの適用をやめる
べきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」などとする勧告をまとめた。
薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないから
という。一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があること
などをあげて、この勧告を退ける方針を示している。
日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法
などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、
厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている
〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。「症状を起こす毒」として昆虫や
植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこま
せて飲む。この玉を「レメディー」と呼んでいる。100倍に薄めることを30回繰り返す
など、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。推進団体は、この砂糖玉を飲めば、
有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。
がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。一方で、科学的な根拠を
否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせた
として親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが
報道されている。 』
各メディアでも取り上げられるようになって、社会的な関心も高まってきたように思われます。
多くの方が関心を持つことは、なにより良いことだと思っています。
まず、最初に断っておきますが、私個人的にはホメオパシーを否定していません。
正確に言えば、ホメオパシーを否定することも肯定することも出来ません。
なぜなら私は、自然科学のうち医学(現代医療)というものを基本的な自分の考えとしており、
ホメオパシーというものをよく知らないからです。
だたひとつ言えるのは、ホメオパシーというものは現代医療とは全く違うものであり、代替医療
という紛らわしい名前もついていたりしますが、決して現代医療の代替とはなり得ないし、
また共存するものでもないと考えています。
なぜなら、そのレメディーと呼ばれるものに対して、現代医療に有用であるという医学的根拠が
認められていないからです。
また日本の一般的な総合病院などで、ホメオパシー科というものをほとんど見かけないのは
そのためですね。
それからまた、医学とホメオパシーは療法的に相反するものでもないと思っています。
ホメオパシーと現代医療というのは全く別個のもので、お互いに何ら関係ないものと考えて
います。
言ってみれば、現代医学療法とホメオパシー学療法というものが世の中に存在する(他にもあり
ますが)というだけのことです。
ただ、それぞれの療法を現代医学の立場から比較することはできます。
あくまで、現代医療・医学から見た比較です。
ホメオパシーからみた比較ではありません。
比較というのは、現代医療の中で多く取り入れられている主な考え方だからです。
現代医療というのは、常に比較検討の連続でもあります。
死亡率はどうなのか、生存率はどうなのか、発症率はどうなのか、予後はどうなのか。
ただ現代医療と言われるものは、どれほど人間の自然治癒力を高めているのかということを
比較することはできません。
現代医療の立場から見ると、自然治癒力を推し測るモノサシを持っていないからです。
それを現代医療に携わる我々医師(多くの)からすれば、「医学的(科学的)根拠がない」と
表現するのです。
もちろん、「ホメオパシー学的根拠」はあるのでしょう。
では、「医学的根拠がない」ことは悪いことなのでしょうか。
もちろん、悪いことではありません。
ただし、「自己決定力を持つものであれば」という条件付きであると私は思っています。
悪いという言葉が抽象的過ぎるので、適切な表現ではありませんが。
例えば、急にお腹が痛くなったとします。
自宅の布団の中で、「神様、早くお腹の痛いのが治りますように」と祈り続けたとします。
神様にお祈りするということは、もちろん「医学的根拠」はありません。
じゃあ、神様にお祈りするのは悪いことかと言えばそうではありませんし、お祈りをさせる
神様という存在は悪なのかといえば、そうではありませんよね。
なので、お腹が痛くなったときに
医学的根拠のある医療を頼って、科学的な検査や薬剤による治療を受けてもよいし、
ホメオパシー学的根拠のあるホメオパシーを頼って、レメディーによる治療を受けてもよいし、
神様へのお祈りを頼って自宅で祈り続けてもよいわけです。
ただし、「自己で決定したものであれば」という条件が必須であると私は考えます。
< 取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは自重せざるを
得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを
使っていた。
K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半が
レメディーを選んだという。
今の日本社会では、医学的に適切な治療が必要で、なおかつ自己決定力を持たないこどもに、
適切な医学療法を受けさせないというのは、悪である、虐待であるという認識になってきて
いると思われます。
それをうすうす感じているからこそ、神谷氏はレメディーを使うのは自重せざるを得ないという
発言をしているのだと思います。
悪かもしれないという認識がなければ、世間からどう見られようが思われようが、
「 レメディーというのは、ホメオパシー学的な根拠があり自然治癒力を伸ばすもので、
周りからとやかく言われる筋合いはない 」
という姿勢を貫き通せるはずです。
逆に言えば、私は医学という自然科学を絶対的に信じているわけですが、将来医学以外の
療法が現れたとします。
例えばですね、宇宙療法と言って宇宙からの隕石のかけらを体の悪い部分にかざすと症状が
改善するというようなことがあったとしましょう。
脳腫瘍が自然に消滅するとかね。
今までの現代医療では脳外科的に腫瘍を摘出したり放射線をあてたりすることで治療して
いたけれど、その宇宙線をあてると自然消滅するようなことがたびたび起こったとします。
最初は、
「 現代医療というのは、医学的な根拠があり生命の質を保ちながら維持していくもので、
周りからとやかく言われる筋合いはない 」
という姿勢を貫き通すでしょう。
しかし宇宙線の効果が、医学と比較し二重盲検法で有意差を持って、治療・予後的に優れて
いると証明されるようなことがあれば、医学を貫き通すことが悪かもしれないという認識に
なってくるかもしれません。
現代医療を行うのは自重せざるを得ないとかいってね。
もっとも良いと思われていた医学が悪になる日が来るかもしれないわけですよ。
自分も含め世間の人々が信じていたものが、変わっていくことがあるかもしれません。
それは医学とて、例外ではないのです。
つまり、このような価値というものは時代の流れによって相対的に社会全体で決められていく
ものだと私は考えます。
その価値が、目で見えるものであったり、数値として表れるものであったり、はたまた人々の
心に訴えかけるものであったり・・・
その価値観のモノサシも時代によって千差万別でしょう。
ただ、ですね。
今の時代の流れでは、「自己決定力のないこども」に現代医療の代わりにホメオパシー療法を
施すことは、悪であると社会全体が認識してきているということだと思っています。
私自身の認識も、そのようになってきているのは事実です・・・