東京都/中野区「都立家政駅」界隈の無人化見聞録-1のすぐ隣もまた無人化戸建てであった。

こちらは、巻き上げ式庇に「靴 スリッパ」との記載があった。

私は「スリッパ」の文字を見て、己の目を疑った。だって、「スリッパ」だぞ。それで店を構えることが出来た時代が、この日本社会の片隅にあったことだ。商売の仕方は人それぞれだろう。だけど、そこにはその前にもっと大きな社会の「仕組み」みたいなものが現存する。それをスリッパで迎え撃つのは無理ではないだろうが、やはり相当な根性とヤケクソが無ければ、誰もそうはしないだろう。

昔からの商売であれ、親の遺言であれ、食っていけなければそれまでであろう。

古びれてはいたが、「スリッパ」と記されたお店が、今もその形を残したまま、現存する。凄い、腹の底からそう思う。

ただ、付け加えるなら、巻き上げ式庇には、スリッパの前に「靴」の記載もあった。どんな靴を売っていたのかは想像できるが、それは敢えて書きたくない。みんなが感じていることと同じだろうからだ。

 

この建物で一つだけ気に入ったことがあった。

それは2階部の外壁に、大きな屋号が金属で記されていたことだ。

それは、ここの家主が己のスリッパなどを売る仕事に自信と名誉みたいなものを感じ取れたからだ。

仕事って、本来はそうしたもの含んでいた筈なのだが、私にはそうしたものが殆どない。だけどここの主人にはスリッパを売ることにそれを感じていたのだろう。

それはある種、羨ましい。

撮影日:令和6年6月15日