前戦ポルトガルGPでの行為が厳しく批判されたマンセル。プロストもチーム批判を展開。フェラーリに暗雲。一方、セナは優勝でタイトルを決めたい。そんなタイトル争いが一気に霞むような大アクシデントがへレスで起こる。
予選一日目、高速コーナーでフロントサスペンションが壊れたロータスのマーチン・ドネリーが大クラッシュ。マシンは大破、ドネリーはコース上に投げ出され、動かない。チームメイトのデレック・ワーウィックが現場に急行、ドネリーを庇うようにピケがマシンを止める。セナも現場に。カメラマンを追い払う。
それほどの動揺をドライバーに与える事故だったのだ。
ドネリーは集中治療室へ。かろうじて命は取り留めたものの、彼のF1キャリアはここで終わった。ロータスチームは資金不足が続いていて、マシンのアクシデントが相次いでいた。そんな中の悲劇。事実、ワーウィックもモンツァで大事故に見舞われている。
セナは動揺していた。「出走しないことを、真剣に検討した。こんな状況のなかでは、感情のバランスをとることは非常に難しい」(『セナVSプロスト』P.296)
スーパーラップを刻み、50回目のPPを獲得した予選後の記者会見でセナはそう語った。
決勝レースは、セナ、プロストのマッチレースとなった。セナにピタリとつけるプロスト。決勝セッティングでは、明らかにフェラーリに分がある。25周目に、プロストがピットへ。セナはその2周後。タイヤ交換そのものは、マクラーレンの方が速かったが、前へ出たのはプロスト。
セナをマンセルはブロックし、すぐに抜いたものの、プロストは差をみるみる広げていく。ナニーニにも追い上げられたセナは、ラジエターが破損、水漏れ、オーバーヒートの警告灯がつく。
54周目にセナはマシンを止める。フェラーリ1-2。あれだけ確執が表面化したプロストとマンセルは表彰台で握手。内心は分からないが、“和解”は演出された。
そして、“和解”したはずのセナとプロストが日本GPでは・・・