学歴詐称疑惑が再燃 | 俳句の里だより2

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「女帝」がピンチ

 

「嘘つきは泥棒の始まり」という「有名なことわざ」があるのは誰でも知っている。「嘘をつくことは、泥棒をするのと同じぐらい悪いことである」ということだが、「嘘をつくのが平気になれば、そのうち泥棒をすることすらも躊躇しなくなる」というのが本来の意味のようだ。かつて、これをもじって「嘘つきは安倍晋三の始まり」という「ことわざ」が世間を飛び交い、流行語になった。これは言うまでも無く、今は亡き自民党の安倍晋三氏が、首相時代に起こした「森友・加計疑惑」など数々の疑惑事件で、国会において何度も虚偽答弁を繰り返したことによる。

 

安倍氏が死去したこともあり、この「ことわざ」は現在は世間から忘れ去られようとしているが、それに代わって今度は「嘘つきは小池の始まり」という新しい「ことわざ」が生まれようとしている。それは、今世間を賑わしている小池百合子東京都知事の学歴詐称問題から名付けられた。すなわち、1970年代に小池氏はエジプトの有名なカイロ大学に入学し、数年後に卒業したので、学歴として「カイロ大学卒業」と名のり続けているが、これがどうも「ウソ」で、実際はカイロ大学を卒業しておらず、中退したのではとの学齢詐称疑惑があるという。

 

この小池都知事の学歴詐称疑惑については、何も最近判明したものではなく、2020年5月に出版された石井妙子氏の著作「女帝 小池百合子」の中で指摘されて都議会で厳しい追及を受け、同年7月5日の都知事選を前に窮地に追い込まれた。しかし、同年6月9日にカイロ大学が、何故か小池氏の卒業を認める声明を唐突にフェイスブックに公表したことで疑惑は一気に沈静化した。自民党を含めた都議会各会派は追及をやめ、メディアも関連報道を自粛した経緯がある。ただ、沈静化したものの、関係者の間では「カイロ大の声明文公開の経緯」を疑問視する声は少なくなかった。ともかくも、沈静化したために、小池氏は都知事選に勝ち現在に至っている。

 

しかし、今年の7月に都知事選を迎えるに当たり、この小池都知事の学歴詐称疑惑が再び再燃したのである。それは、小池都知事の元最側近だった小島氏が、4月10日発売の月刊誌・文藝春秋に「私は学歴詐称工作に加担してしまった」との「手記」を発表したためである。小島氏は、前回知事選前に小池氏の学歴詐称を指摘した「女帝 小池百合子」への対応について、直々に小池氏から相談を受けた際のやり取りを中心に、改めて関係者に問い質すなどして事実関係を精査した結果「学歴詐称だと確信」して「告発」記事を寄稿した。さらに、現在弁護士の小島氏は、17日午後に「日本外国特派員協会」(外国人記者クラブ)で1時間半にわたり記者会見し、改めて「告発」に至った経緯や事実関係を説明した。

 

17日の会見で小島氏は「カイロ大が声明を公表する案は自らが提案したものだった」として、当時、自分と同じ小池氏側近だった元ジャーナリストのA氏が「その原案を作ったことがわかった」と説明、その裏付けとしてA氏が作成した声明文の原案と、実際にフェイスブックに公表された文面を並べて提示し、両者がほぼ同じ内容であることを指摘した。そのうえで、都知事選公示の6月20日に小池氏が立候補を届け出た際、自身の経歴に「カイロ大学卒業」と明記した場合には、「公職選挙法上の経歴詐称として刑事告発をする可能性がある」と明言するとともに、現時点では匿名にとどめているA氏の実名も含め、「裁判になればすべてを明らかにする用意がある」と語った。

 

また、小池氏と長年の交際がある前東京都知事の舛添氏は、SNSで「小池氏の学歴詐称疑惑について、私の知っていることを書く」としたうえで、「嘘から始めた政治家人生、本人のためにも、日本国のためにも、この権力欲にまみれたポピュリストはもう政界から去ったほうがよい」と厳しく非難した。

 

その一方で、小島氏の17日の会見には日本の中央・地方各新聞社やテレビ各局など多くのメディアが集結、取材していたが、NHKや民放各局の17日夜以降のニュースや情報番組、翌18日の中央・地方紙朝刊などは、ほとんど踏み込んだ報道をしなかった。これは、岸田首相の側近だった木原元官房副長官が関与した例の「木原事件」(妻の殺人疑惑、木原氏のもみ消し工作疑惑)や、故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、週刊誌では大々的に報道して世間に知らしめるものの、新聞社やテレビ局ではほとんど報道しない姿勢と全く同様であり、世間へ情報を発信する義務を負うマスメディアやジャーナリストととしては失格であり、存在価値は全く無いと言ってよい。

 

さらに、先の月刊誌・文藝春秋には、石井氏の「女帝 小池百合子」の中で匿名で告発していたエジプト時代の同居人女性が、ここでは実名で「告発」するなどその信憑性が高まり、小池氏の学歴詐称疑惑がますます濃厚になって来たため、小池氏の政治生命の危機がささやかれ、今後の展開次第では、告示まで2ヶ月となった都知事選の構図も一変しかねない状況となっている。しかも、「告発」の余波で、岸田首相の命運がかかる「4.28トリプル補選」の中で大混戦となっている衆院東京15区での「自民不戦敗」が確定した。このため、「小池ブランド」にすがって同区での「勝利」を狙っていた岸田首相と自民党執行部は、全く想定外の事態に困惑しきりだとのことだ。

 

これだけ世間の注目を浴びている学歴詐称疑惑であるが、当の小池氏は12日の定例会見で「今回の告発はそもそも大前提が違う。卒業していないというが、大学が卒業を認めているし、すでに卒業証書と卒業証明書はこの場でもお伝えしてきている」と疑惑を全面否定した。そのうえで「前回騒いだ時は2020年6月で、再選出馬した都知事選の直前。そもそも選挙のたびにこうした記事が出るのは残念」と強い不快感を表明した。翌週19日の定例会見では、この件に関しては触れずじまいで反感を買ったが、ただ小池氏にとって「唯一の救い」は、何故か中央紙やテレビ各局といった大手メディアがそろって「極めて慎重な対応」を取ってくれていることだ。

 

しかし、インターネット上では「嘘つきは小池の始まり!」「小池は自分ファースト!」などの書き込みが氾濫し、「小池バッシング」が際立っている。今後の小池氏やマスコミの動向が注目されると同時に、非常に楽しみだ。