オンライン俳句図書館は

「ミルトス館」に名称を変更いたしました

 

春の塵はたいて古書を買ひにけり  福江ちえり

 

『雉十日会 合同句集』より

 

これは、神保町での一場面です。

神保町は古書の街。ときどき訪ねては、

歩き回って本を探したり、

思わぬ本に出合ったり、

大好きな街です。

歩き回って疲れたら、喫茶店で一休みします。

その目の前にも古本屋さんがあり、

お店の外の本棚が置かれていて、ほとんど空でした。

それが、しばらくすると、

店主が大量に色あせた文庫本を抱えてやってきて、

その本棚いっぱいに並べました。

「あ、入荷だ」と思うやいなや、

サラリーマン風の男性が数人、先を争うように現れて、

本を一瞥するやいなや、あれこれ手に取り、数冊ずつ束にして、

パンパンとはたいては、お店の奥のレジへ消えて行きました。

そして、本棚は、また空になりました。

その勢いたるや、田舎者の私は、あっけに取られて眺めていました。

しかも、喫茶店に憩う私の目の前で、それは何度も繰り返されたのです。

もう何十年も前の話ですが、その時見た光景を俳句にしました。

春の風が運んでくる塵に晒された本。

それを手にする人は、皆、塵を叩いて中を開きます。

ささくれて色あせた本の感触。

埃の匂い、インクの匂い、

積み上げられて撓んだ棚、すべてがこの街の風景。

文化と言えるのではないでしょうか。

 

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カノン