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サイダーの中浮かび来る山河あり  伊藤幹哲

 

句集『深雪晴』より

 

サイダーの句は、結構難しくて、

あの泡立ちや爽やかな口当たりを表現するのは、

至難の業です。

 

こちらの俳句は、

サイダーの詮を抜いたか、コップに注いだ直後、

泡立ちが一気に沸き起こり、

そして、泡が抜けて、落ち着いたら、サイダーに山河が映っていた、

という場面です。

映っていたのではなく「浮かび来る」という過程を捉えたところが、

とても優れていると思います。

ゆらゆらと歪んで映る山河が、やがて落ち着いて、

しっかりとした風貌が、その小さない器の中に納まっています。

その一瞬の時の流れを、サイダーそのものを詠まずに、

山河を詠み上げた視点に脱帽です。

 

季節は夏。生い茂った山々を囲んで、サイダーの詮を抜く作者は、

おそらく日常を離れた空間で、羽を伸ばしているのでしょう。

青年の息遣いまで感じられる、CMになりそうな一句です。

 

 

ダウンダウンダウン

 

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