また来られ二人で来られ風の盆   宮崎 修

 

こちらは、句集外です。

風の盆の俳句が登場しましたので、思い出した一句です。

 

こちらは、越中富山の方言を詠みこんでいます。

標準語に直すならば、

「またおいで、二人でおいで、風の盆」

ということになります。

 

富山には「られ」敬語が活きており、

来られ、見られ、食べられ……など、「られ」「られ」言います。

この「られ」によって、直ぐに出身地を見破られてしまいます。

 

たとえば、輪島の朝市では、

「こうてたい」(買うてたい)

と海女が呼びかけます。

買ってちょうだい、という意味で、「〇〇してたい」というのは、

加賀能登の方言で、「〇〇してちょうだい」という意味です。

 

ちなみに、加賀能登地方では、富山の「られ」は「まし」という言葉になります。

掲句ならば、

また来まし二人で来まし風の盆

と、なります。風の盆ではおかしいですね。

「能登キリコ」にしましょうか。

 

それはさておき、

こちらは、若いカップルに、お宿の人かどなたかが、

お見送りのご挨拶にいらして、おっしゃった言葉でしょう。

越中富山の言葉が、臨場感を醸し出します。

観光客が、ご当地富山の言葉で送り出される、風の盆最後の夜のあと。

おそらく、朝の一番列車でお帰りのお客様へ、

「また来られ、二人で来られ」

と優しく語りかけたのでしょう。

 

田舎の柔らかな言葉が、この句の眼目。

嘘のない感動を伝えています。

 

カノン