師走月、今年の詠み納め句会を開催しました。一年はあっという間。毎日いろいろなことを見たり聞いたり味わったりしているはずなのですがどれも忘れがちです。せめて感動した場面は文字に綴っておきたいものです。これは自戒の念を込めてですが。
さて、今回の兼題は冬の食べ物でしたがやはり鍋が多い印象です。迫る年の瀬、気持ちは急いていても心には余裕の居場所を取っておきたいものですね。
平澤達也
牡蠣鍋や口に入れれば無口なり
日曜の宵蜜満ちて冬林檎
冬暁ワンフレーズをリフレイン
熟れ蜜柑三つ食べれば手を染むる
水野ゆうき
寒空や熱燗はまつすぐ胃に滲む
ヒレ酒や忘年会の決め手なり
白き雪上で輝く冬苺
けんちん汁手のひらぬくし足ぬくし
寄鍋をつつけば方言出る宴
高崎志朗
鍋囲む親父采配皆呆れ
弁当の煮凍り無いと騒ぐ子よ
冬至の日向いのビルの影届く
芭蕉の実いつ落つるかと霜の路
川岸に番の鴨の日向ぼこ
鳩の群れ蜘蛛の子散らす冬の鳶
露天風呂白龍昇る冬の月
渡辺 健志
廃屋に紅ほのかなる冬椿
抜きたての大根甘し舌の先
白菜の五百円惜しみて鍋出さづ
大竹 和音
六畳間蒲団丸めて鍋囲む
そこかしこ徳利転ぐ忘年会
クリスマス下手な流しの留学生
ピラルクーと酸素ボンベのサンタクロース
コルク栓障子突き抜くクリスマス
穴熊や洞窟籠るボカロP
坂多き田舎に生まれ冬の星
小林泰子
白障子小さき穴から小世界
待ち合いのピンクコートの腕まくり
冬うらら赤子の手手と私の手
今川焼き紙袋ふにゃふにゃ
白石 洋一
胎児の様にまるまると楽になる
どうせ死ぬなら生きて居ようと思う
運がいいとか悪いとか思うんだ
時と言う決め事の無意味
畑一面の霜を日光が溶かし始めた
陽射しの中猫二匹戯れる影
猪や痩せサツマイモ旨かった?
仲間達串焼き囲んで年の暮れ
最期はたった独りぼっち
カボスの香味噌汁絞りヤミツキに
刈谷 見南國
納豆喰ひスピーカの上寝転びぬ
納豆、も記す当用日記かな
納豆の糸伸ぶ追斬の演武かな
納豆の糸伸ばしモールス打電せり
ピンク・フロイド聴けり納豆腹のまゝ
おでん喰ふ音キチすぎる中学生
ザ・バンド語る電話ボツクス息白し
白黒の映画白息さらに濃し
体のいいリストラを経てクリスマス
寒茜見へぬ血拭ふ居合かな
福冨 陽子
白き鱈海の白きをこんなに吸ひて
焼鳥の串刺し途中で周波数
大根や輪切り十回詫びながら
ペテルギウス室町時代の煇は
寒星や玄関までの八秒観察
切干の煮汁の染みや新聞紙
配達の車停まれば大嚏
編棒のクロスしたまま師走入り
同人誌六号六花
冬日差し化粧の位置をずらしをり
厳冬の朝 クロスした雲
