春天や連山いつそう高く見せ | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 私たちの住む宇都宮からはたいていどこからでも日光連山、とくに男体山が見えます。まだまだ寒い日は続き山には雪も降ることでしょう。それでも日に日に空が明るくなっているような気がします。もう少し暖かくなると春霞の中に日光連山、那須連山が幻想的に宙に浮かんで見えることもあります。

 2月19日に開催した自由俳句「風薫」句会での作品を掲載いたします。

 

 

高崎志朗

うたた寝や風邪を案じて(ひと)の声

舟を漕ぐひとりテレビの炬燵かな

学校の百葉箱と金次郎

大寒の畳硬しや合気道

へつぴり腰滑る孫らの息白し

晴れの日や布団干したる八度の日

大声でひとり蒔く部屋鬼やらひ

 

 

疋田 勇

霜焼けや痛みこらえて空手道

冬の田や入り日に染まる藁の山

墓地の径日溜まりの中福寿草

いつのまに寝床にたどる春日かな

 

 

山 多華子

春暖炉心身ともに居眠りす

百本針豆腐に刺して供養の日

決意の日北窓開く吾の部屋

ひとつ決めひとつ捨てたり牡丹の芽

梅香る前掛け新た朝支度

 

 

渡辺 健志

梅香や売店の客奪い取り

幼子の寝息聞きつつ春の夕

読み聞かせ読み手傾く目借時

春昼や商人の眼差し虚ろ

春の風欠伸連鎖の観光地

 

 

大竹 和音

春眠や最期の顔の穏やかな

行きつけをはしごしたのち涅槃の日

魂魄はまつすぐな道春の雲

雪解けや僮は跳ねる泥兎

検温と記名洩れあり春の宴

栄転の若人唄ひ雲雀東風

山笑ふ野次の飛び交ふ野外フェス

新曲の歌詞あれこれと石鹼玉

おすそ分けしたりされたり春三日月

種蒔や自給自足のアーミッシュ

 

 

白石 洋一

時は静かに過ぎてゆく息をする

やがては私も死に行く無を残して

酒魚安宿集いヤツ偲ぶ

死んだんだなと想う事が哀しい

長いローンは今年迄生き方変えよう

早朝や時の過ぎゆく音聞こゆ

眠れなかった頃もあったなぁ

眠りへと落ちる瞬間知りたくて

眠ってる隣の君は幸せね?

眠れぬ夜に句を紡いでおり

 

 

刈谷 見南國

雪しまきジェフ・ベック振り向かぬまま

冬銀河フリオは行方不明なり

ガリバーのカズオ小さくなり冬晴

教へ子に教はる人や石鹼玉

冴へ返る二段階段にも奈落

雷蔵の手描き看板に春雨

廃校に非常灯点き春の月

タツパーの蓋合はせては鳥帰る

平安の麻呂のやうなり大朝寝

 

 

福冨 陽子

あけぼのや悪夢はうつつを越へてゆく

春眠やへつりの順路に従ひて

羽虫群れ陽に輝けば雨水かな

芋の芽や起こされたのか起きたのか

桃色のジャケット華やぐ宵の口

バレンタインりんごショコラの甘酸さよ

春水や森羅万象輪廻する

春雪や大降り予報の休息日

独活剝けば無垢色深し揚げ油

どぶろくや野遊待ちて籠の中

南を向いた水仙の横顔