なにもかもに命あると知る大暑 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 大暑を迎えました。暦の上ではすでに晩夏。雨ごとに植物はぐんぐん育っていくのがわかります。昔は夕方になると家の前に打水をして涼を呼びせる家庭が多かったものです。そんな素朴な習慣も消えつつあるのは残念ですが、かく言う私も柄杓を持っていません。どこかで見かけたら買い求めたいと思います。

 今回の兼題は「汗」。風薫7月の句会が開催されました。

 

 

おののひいこ

目をつむる汗かけぬシロ舌を出し
浅き夏わが腕を白杖として
みどり葉に生まれたてのトンボのをり
沖縄忌八十年経つた今も
青草や先の戦から幾年
夕日さす大地広がる黄の青田



疋田 勇

梅雨走り行き先わからづにゐる
十薬の群生にひとりおぼれて
手の皺に鼓動浸みたる青蛙
孫の手をにぎりしめてやアイス買ふ
夢馳せり群生キスゲ蝶の群
蜘蛛の巣や一滴の雨輝けり
蝸牛ツルイモを這ひドヤ顔
目の覚悟病院に身を預けたり
拳の道汗の滴の床に落つ


山 多華子

野馬追と桃と赤べこ玉の汗
溽暑やモーニングサービス汗ひける
七夕や汗をふきふき夜の空
梅雨の間の洗濯日和窓放つ
酷暑日やすっきりさっぱり朝シャワー
大平山やまあじさいと涼むなり
七夕にかの君の文読む女よ
麗しき夏空に見る風と雲
戻り梅雨トマトジュース檸檬割り
甘酒や独り愉しむ夏の月



渡辺 健志

炎熱や闘牛見合ひストライキ
空の色緑映ろふ青田哉
水かけし墓石煌めく夏旱
土用雨滝を作りし山面
頬伝ふ汗と思ゐて俄雨



大竹 和音

遠雷やダイナモの音漕ぐペダル
宮染めや反振る田川紫蘇サワー
浴衣地の宮染め流し田川かな
夏山や背中の吾子の寝息かな
天気読みの子とロープウェイ大夕立
汗のシーツ替へ気力なき個室
夏休みロバのパン屋の蹄鉄音
豆腐屋の煮だしの匂ふ小路かな



小林泰子

朝曇洗濯機のスタート押す
夏の蝶ゆるやかに行ったり来たり
玉の汗落つも止まらぬ掃き掃除
長ナスやもぎってつんで切って切って



白石 洋一

仔猫四匹餌咥えて運ぶ母猫に涙
山林にカッコウの声透き通り
草ボウボウの畑ジャガイモ育つ
朝ドラで泣かされて泣くなんて
水をやる汗だくになり風を待つ
午後六時雲が走って行くように
蛇の迷いこむ田舎の家に住み
寝汗かき目覚めた朝は六月
六枚葉のクローバ見つけた
シャツの汗が乾くと酸っぱく匂う



刈谷 見南國

七月の馬電離層反射せり
物差しの吸ひつく机汗疹掻く
汗の電話ボックス新譜評熱弁す
青水無月トツプ通過の無線技士
対抗戦全生徒見て山滴る
文体に昼顔父の影響下
ビニ本のサブカル記事や草いきれ
映画観ずしてWOWOWドラマ谷崎忌
名画座にかかるまで咲く百日紅



福冨 陽子

瓢箪の伸びたる蔦に影の富む
土砂降りに化粧落ちたり夏寒し
短夜や痩せ猫と分け合ふ魚
扇風機汗と悪心をかざせば
にわか庭師をうかがひて夏雀
雨上り花火の音の虚しかな
玉汗をかかぬまま人生語る
分かり合へぬ人と暑さ分かち合ふ
鰻屋の土用の客を巻く煙
ひとくちでトマトの宇宙食べてゐる

屋上より宇都宮タワー(八幡山公園)を望む