図書館の本まとめてや夏あざみ | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 長すぎた雨の日々、やっと暑さきて遅い梅雨明けとなりました。今年は植物も成長が控えめで花を咲かせているようです。6月に私たち風薫の句集(第9集)が刊行し、たくさんの方々に読まれて感想などもいただきありがたいものです。これから酷暑に向かう折、健康に気をつけて夏を過ごしたいものです。

 先日開催されました句会での作品を掲載いたします。

 

 

 

 

巻島 武宣

七夕や出せずにしまってある手紙

てるてる坊主七夕竹に添へてみる

多分まだ愛しているよ半夏生

歌声の曇りも消へし半夏生

老猫も百物語聴ひており

百物語後ろの正面誰かいる

空豆や腎臓ひとつ取りにけり

ビールよく冷え誕生日に乾杯

残り香は蚊遣香では消せぬもの

泳ぎたし水着になれぬ様なれど

 

 

大竹 銀河

大切な名を書き添へし星祭

降るほどに星ある中のニ星かな

迎へ風送り風吹く星逢ふ夜

鷗外忌往復書簡古りゆけり

縦書きやインクの擦れて鷗外忌

黒ずみの杯交わす鷗外忌

夏越了へ真っ赤な鳥居潜りけり

呼ばれずと茅の輪潜りの列にゐて

万人に開く茅の輪の佇まひ

 

 

山 多華子

世にあえぎ避暑の宿に永遠に居り

梅雨空に見えぬと知りても星になる

日盛りを遠くに見つめ傘の下

 

 

 

渡辺 健志

長梅雨の涙流るるメガソーラー

ベガルタの由来を知りて杜の空

梅雨空に差する薄明神の箸

久方の日ざし見上げて水溜り

温風の止まりし後に人の波

空腹よ我儘言うな店が無い

 

 

 

大竹 和音

をり姫やけふは身を引く夜這星
笹舟にのせたる願ひどこへやら

追ふからす逃げろ小雀梅雨曇り
青林檎アナログ盤に針落とす
万屋の銀紙くつく夏のガム
水風呂や童跳び込む波しぶき
紫陽花や足尾の廃墟に人の声
夏の子や裸足で跳ねてトタン屋根

 

 

小林 泰子

シート敷き友とみつける天の川

給食の七夕ゼリー思いはせ

夏寒し腕さすりつつ暑さ待つ

 

 

荒木 あかり

夏の朝しろさぎ一羽我も一人
梅雨あけや陽射しの強さああ夏日
七夕や川に流せし遠い記憶
サワサワと稲葉鳴らして台風過ぐ
暑くてもホットコーヒー淹れにけり

 

 

白石 洋一

雨続くキュウリの蔓は宙を這う

雨音も優しき夜のしじまかな

七夕や今年はメールの返事無し

静寂の上に耳鳴りが乗る闇は深く底無し

負け犬かと思う闇の天井は見えず

闇と静寂の奥深く人で無くなる自分

闇の奥に人生を写すスクリーン

 

 

刈谷 吉見

ジルベルト逝く表札は二度落ちて
七夕や花跨ぎゴミ出す深夜
夏銀河螺子ばかになり鉄の粉
バカラック捨て曲のなし心太

冷房や停止二度押しラムプ消ゆ
黒揚羽背中チャックの張りつめる
缶ジュースえび反つて飲む雲の峰
カウンタの椅子胡坐かき梅雨ながし

 

 

石井 温平

(こだま)する選挙の連呼夏の山

熊避けの笛持つ列や登山道

夏山路辿り登りつ湖臨む

七夕の兼題嬉しデイケアー

再会の無き半生や星祭

 

 

福冨 陽子

雨雲の隠したき()(たた)七夕や

紫陽花の色褪せり雨に艶めく

露草の抜かねばならぬうらめしき

素饂飩のつるり滑りて膝の上

掴み落つ饂飩見ぬふり情け喰う

雨そぼろ祭囃子や山車の動けく

夏風邪か茫乎(ぼうこ)に見る夢蚊の餌食