春待ちの心かろしや早歩き | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 桜前線、今年は例年になく早く訪れそうです。宇都宮の開花予想は3月29日とか。今年はどこの桜を見に行きましょうか。
 卒業や入学の季節、学生はこの節目で何かを終えたり始めたり。そんな氣を感じつつ、私たちの生活にも新しい決意やスタートがありそうです。小さな決めごとは大きな成果への足がかり。小さな発見は大きな感動の始まり。そんなことを思いました。
 3月19日の「風薫」句会の作品です。


■ 大倉 美和

目覚ませり肌の細胞水温む

春告魚 各々買って一笑い

机にもさよならをしてジントニック

しなくてもよかった喧嘩 山笑う

鶏五目にも想い寄せるや彼岸



■ 荒木 あかり

あかね色 筑波の峰々照りわたる

検査終えしばしの休み談笑す

初雪や進むや足の重さなり

夜汽車乗る 黄の満月を追いかける

霧の朝 足もと見つつ夢の世界

大寒や田のくろついばむカラス一羽

白れんぎょう戸閉めの家にも咲きほこる



■ 白石 洋一

温き朝 冬らしく無く 有難くも有り

空気中 息する自分の 指の先

時間は 人の生き方を 変えられない

寒空に 正午のサイレン 響きおり

猫の足跡が雪に残る今朝



■ 刈谷 吉見

隠岐の海 勝って口元笑う春

過去から見ゆるキース・エマーソン死すまでを

二句つくりし頃には右折レーンできてをり



■ 石井 温平

桃の日や 五十路しっかり生きる娘(こ)ら

春暁や 新聞届く音を待つ

春暁や 職場の遠き吾娘忙し

床屋出て襟に優しく春の風

春雨や お墓の妻の小言聞く



■ 福冨 陽子

春風や髪の分け目を勝手に決む

昼晴れり はかま姿を横見する

小説を読みし五分の睡魔勝ち

固唾のみ大相撲観る 猫あくび

桜見の早き噂に包丁の止まる



去年の桜や茶の中に