卒業や入学の季節、学生はこの節目で何かを終えたり始めたり。そんな氣を感じつつ、私たちの生活にも新しい決意やスタートがありそうです。小さな決めごとは大きな成果への足がかり。小さな発見は大きな感動の始まり。そんなことを思いました。
3月19日の「風薫」句会の作品です。
■ 大倉 美和
目覚ませり肌の細胞水温む
春告魚 各々買って一笑い
机にもさよならをしてジントニック
しなくてもよかった喧嘩 山笑う
鶏五目にも想い寄せるや彼岸
■ 荒木 あかり
あかね色 筑波の峰々照りわたる
検査終えしばしの休み談笑す
初雪や進むや足の重さなり
夜汽車乗る 黄の満月を追いかける
霧の朝 足もと見つつ夢の世界
大寒や田のくろついばむカラス一羽
白れんぎょう戸閉めの家にも咲きほこる
■ 白石 洋一
温き朝 冬らしく無く 有難くも有り
空気中 息する自分の 指の先
時間は 人の生き方を 変えられない
寒空に 正午のサイレン 響きおり
猫の足跡が雪に残る今朝
■ 刈谷 吉見
隠岐の海 勝って口元笑う春
過去から見ゆるキース・エマーソン死すまでを
二句つくりし頃には右折レーンできてをり
■ 石井 温平
桃の日や 五十路しっかり生きる娘(こ)ら
春暁や 新聞届く音を待つ
春暁や 職場の遠き吾娘忙し
床屋出て襟に優しく春の風
春雨や お墓の妻の小言聞く
■ 福冨 陽子
春風や髪の分け目を勝手に決む
昼晴れり はかま姿を横見する
小説を読みし五分の睡魔勝ち
固唾のみ大相撲観る 猫あくび
桜見の早き噂に包丁の止まる
去年の桜や茶の中に
