さて、今年は暖冬といわれながらも宇都宮界隈の朝晩の冷え込みは例年並みでした。先日十五日などは前日は穏やかに晴れたのですが、雨が降りやがて雪に変わりました。夜十時に車に乗ろうとしたらドアの縁が凍りついて開かなくなりました。開くまでは焦りましたが、そこまで春が来ているのがわかっているからどこか余裕がありました。
二月二十日、今年二回目の「風薫」句会の作品です。
■ 田代 由美子
真っ白き富士にため息 都会(まち)の朝
寒に耐え朝どり甘くほうれん草
恵方巻 求むる列の長きこと
雪花の輝き増すや春の午後
孫来れば赤子ペースに早変わり
■ 白石 洋一
時とは 誰も知らない 仕掛けあり
亡き父の 植えし菊咲き 蝶集め
遺影並ぶ 私は 誰に似てるかな
ローマ字変換で 句を紡ぐ時代
いきることなぜいきるかをしりたしや
生かされしこの世の時の 意味を問う
■ 神谷 操
バレンタイン今年こそはと絵馬に書き
チロルチョコもらってうれしバレンタイン
■ 奥 りよ
那須の山 いつもとちがう雪げしき
夕方に外に出てみて日が長し
夕暮れの外明るし心おどる
■ 刈谷 吉見
イヤホンのLR外野の守備浮かべ
母はここ小さき鏡台思ひ出し
亡き友の夢 パンを買ふ散歩道
味しみ大根を悲しみ大根と見まちがえ
■ 石井 温平
しもつかれ四度も貰う栃木好き
春立つや向学の志士逞しく
「鬼は外」今年も独り小さく言ふ
梅真白 八十路の心 真新し
半生の喜怒哀楽や梅白し
■ 福冨 陽子
暑き日の翌 細雪舞ふ如月の午後
白梅の知らせや来れり 髪梳く朝
先々の同窓会を契りし師の電話ある
花冷えや 皿洗ふ手頸の冷たき
麗らかを裂く声を出し烏の子
お人好しの風生む河渡る窓開くる
だだっ子の声聞くだけの耳鼻科なり
