入道雲からいわし雲へと空の様子も移行中です。
暑すぎず寒すぎず、これからがちょうどいい季節です。沖縄には「テーゲー」という言葉があります。それは、身のほどに合った、ちょうどいい感じ、適度に、ほどほど、という意味合いで使う言葉です。テーゲーに秋を楽しみましょう。
■ 大倉 美和
遠きにも近きもありし受賞の友
会ったことない人の人生に触れる星月夜
大中小 かぼちゃ窓辺に鎮座する
■ 高山 昌子
短冊に子の夢語る娘の参観
プランター 孫待つ苺 夏の雲
物干しや雫の落つる梅雨の晴れ
「毎日が父の日だね」と老父(ちち)笑う
主留守 奴とビール あかね雲
■ 田代 由美子
送り盆 晴れ間の墓石に蛙おり
門を抱えしさるすべり 蝶の舞う
蝉を聴く 里の街道すすき揺れ
初みょうが 摘みたる母の頬緩む
■ 佐藤 宣明
青田せいせい青鷺の仔
摘み取りぬ茄子や胡瓜もお盆さま
城跡も戊辰の夢も蝉時雨 ※壬生町歴史民族資料館(四館共同企画展・幕末動乱)
大渦逃れし鰯の群銀鱗輝く明けの大空 ※台風間近の朝のひととき
山荒らさば里衰ふ 自ずから然りの事象なり ※最終処分場建設に思う
梅鉢草浄らら赤酒々(じょうららしゃくしゃしゃ)涼しかり
■ 刈谷 吉見
落合記念館に行つたのも夏だつた
ひじつつき四十二年ぶりと確かめり ※同窓会
やつと二句できたときには夏逝けり
100以上道間違えた夏は逝く
■ 福冨 陽子
夏風邪を横目で見やる琉球朝顔
藪からし 投げ蚊帳のごと生え盛る
笹竹を分けいで近道あせもの痛し
鮎の香とスイカの香や似し 鼬(いたち)雲
コスモスや群の強さや 鰯雲
塩谷郷 水や森やの豊かなりしも
咳をしつ眠れぬ床の小夜時雨
