夏 最終章 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

葉月の最後の土曜30日、句会を開催しました。
入道雲からいわし雲へと空の様子も移行中です。
暑すぎず寒すぎず、これからがちょうどいい季節です。沖縄には「テーゲー」という言葉があります。それは、身のほどに合った、ちょうどいい感じ、適度に、ほどほど、という意味合いで使う言葉です。テーゲーに秋を楽しみましょう。

■ 大倉 美和

遠きにも近きもありし受賞の友

会ったことない人の人生に触れる星月夜

大中小 かぼちゃ窓辺に鎮座する


■ 高山 昌子

短冊に子の夢語る娘の参観

プランター 孫待つ苺 夏の雲

物干しや雫の落つる梅雨の晴れ

「毎日が父の日だね」と老父(ちち)笑う

主留守 奴とビール あかね雲


■ 田代 由美子

送り盆 晴れ間の墓石に蛙おり

門を抱えしさるすべり 蝶の舞う

蝉を聴く 里の街道すすき揺れ

初みょうが 摘みたる母の頬緩む


■ 佐藤 宣明

青田せいせい青鷺の仔

摘み取りぬ茄子や胡瓜もお盆さま

城跡も戊辰の夢も蝉時雨    ※壬生町歴史民族資料館(四館共同企画展・幕末動乱)

大渦逃れし鰯の群銀鱗輝く明けの大空       ※台風間近の朝のひととき

山荒らさば里衰ふ 自ずから然りの事象なり    ※最終処分場建設に思う

梅鉢草浄らら赤酒々(じょうららしゃくしゃしゃ)涼しかり


■ 刈谷 吉見

落合記念館に行つたのも夏だつた

ひじつつき四十二年ぶりと確かめり    ※同窓会

やつと二句できたときには夏逝けり

100以上道間違えた夏は逝く


■ 福冨 陽子

夏風邪を横目で見やる琉球朝顔

藪からし 投げ蚊帳のごと生え盛る

笹竹を分けいで近道あせもの痛し

鮎の香とスイカの香や似し 鼬(いたち)雲

コスモスや群の強さや 鰯雲

塩谷郷 水や森やの豊かなりしも

咳をしつ眠れぬ床の小夜時雨