■ 高山 昌子
いつもと違う朝日
光無く 輝かぬ太陽
灰色の空 裸体を曝す
魅せつける姿
いつもと違う日にしよう
何をするべきか 何をしたいのか
鳥さえずり 川の鯉踊る
息吸うだけで 生きているとはいえない
水仙の花 誇らしげに笑う
■ 田代 由美子
ふきのとう百歳の声も届きたり
春雷に愛犬震え花の散る
田植え待つ農夫の背中に春の風
しゃぼん玉とばしてはしゃぐ子らの笑み
海青し まったり心も透けてゆく
■ 半沢 美恵子
断舎離や 一部屋十の春そうじ
朝桜 珈琲片手に八幡山
いわうちわ 里山登り息きれて
里山に しょうじょうばかま鎮座する
タラの芽や塩で一口 手間をかけ
■ 白石 洋一
梅の花 日差し柔らか 深呼吸
満月や 星の数を 減らしおり
やがてはと 思う心は 梅の花
一人でも寂しくないさオリオン座
コーヒーに朝の時間を預けたり
レトロなる食堂の自家製カレーの旨さよ
強がる父の口元痩せ細る
酔えばいいそんな気持ちの指先冷たい
窓ガラスに映る自分はただの老いた男
■ 佐藤 宣明
鐘の音も澄み染まりけり梅の花
桜咲く袖の長さに期待込め
田蛙のまだ恥ずかしき草の径
神さびて玉散らすホソバミズゼニゴケの清明よ
雨上がり 苔日和 東風の木石
■ 刈谷 吉見
春の雨 給料明細忘れをり
餌箱を突いてる音春の昼
気がつけば掻いている足 夏近し
ゴマ油 交ぜしパラパラ春チャーハン
花見行 食堂車のサンドイッチ チンされ
■ 福冨 陽子
虫起きる 地や葉やここし 卯月晴れ
退院を告げられ廊下に伸ぶ陽射し
長蛇にまぎれ5%のペンをひとつ買い
阿武隈や滔々とゆく 雪溶け抱く
たけのこの皮ににじみし梅干を吸い
友の便 高知春野の香を添えり
道端の枝垂れ桜や 人を撫で
草餅を六つといい 五しかないですねと主の声
斑雪(はたれ)野を 飛び交い鳥の嬉しからずや
