「とこよより まれびときたり いろりばた」と読んでね♪
今日はsnowman氏からリブログして画像もお借りしました。プロ顔負けのカメラ技術だけではなく、
映し出された日本の原風景のような光景に思わず、おおっ!と声を上げてしまいましたわ♪
【画像引用:snowmanのブログ/柿簾 http://ameblo.jp/hondalife/page-3.html】
こんにちは、本日の季語は「囲炉裏端」(いろりばた)・・・冬の季語で「炉」(ろ)のサブ的季語に
なります。「炉」は本来は茶道の切炉を指していましたが、現代ではもう「囲炉裏」を指すのが
一般的でしょうね。他の漢字表記で「囲炉裡」とも書きます。
他には、囲炉裏の火の仄かな明りを「炉明」(ろあかり)、また皆で囲炉裏を囲んでの昔話や
よもやま話などをするのが「炉話」(ろばなし)など・・・。
また、別枠として冬の初めに炉をしつらえるのが「炉開く」、そして冬が終わり春の兆しが見える頃
暖房としては不要になるので、ふさいでしまう「炉塞ぐ」(ろふさぐ)などがありますが、現代の生活
感覚や生活様式ではちょっとピンと来ませんよね。 まあ、コタツや暖房器具の使い方に近いかも?
切炉は、茶道をたしなんておられる方は御存知の通り、11月の初め頃から5月の初め頃まで
茶席でお湯を沸かすために用いられます。 ↓サイズは一尺四寸四方の小さなもの。
【画像引用:Kameno's Digital Photo Log 炉の正午茶事】
そうして、「炉」は国語辞書的には「火を燃やしたり香などをたいたりする設備や器具」と定義
されています。 (ただ、ここでは原●炉とか増●炉などは考える必要はありませんのでね。)
様式は異なりますが「暖炉」に近いでしょうか。設置するのが床か壁の違いはあってもネ。
暖炉についてはこの記事の後半で少々 ↓
※2015.11.10 冬に入る ( ^ー゜)σ ひと缶の灯油の重さ冬に入る
【『若草物語』より 1933年度版vrs. キャサリン・ヘップバーンが主人公のジョオを演じました】
ところで、あなたのお家には囲炉裏があるかしら?
・・・などと聞いてみても答えはほぼ100%近くは「ありません」でしょうね。
もしかしたら、お茶室に切炉があるかもしれないけれど、ここではあくまでも囲炉裏だから。
囲炉裏は、家の床の一部を切り取り、薪や榾(ほだ)また炭を焚き暖を取る場所です。
天上から自在鉤(じざいかぎ)を吊るして鍋ややかんをかけて炊事用の煮炊きなどもします。
いわば暖房と煮炊きが同時に出来る便利な設備でもあります。
【画像引用:蓮田の匠 http://www.hasuda-takumi.com/merchandise/】
↑最近では昔ながらの農家風の囲炉裏ではなく、現代建築のお宅にもこういう囲炉裏を取り入れる
お宅もあるそうですね。いわばインテリアの感覚かなあ?なかなか洒落ていると思います。
但し、句で詠みたいのはそうしたモダンな今風な囲炉裏ではありません。
日本の原風景のような農村の生活の匂いがしみついたような、そんな囲炉裏が宜しい。
─── 少なくとも ” まれびと ” が訪問してくれるようなお家ならば、ね。
【画像引用:石川直樹「まれびと」 スネカ(大船渡市三陸町吉浜)https://dot.asahi.com/asahicameranet/】
ところで、「まれびと」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
漢字でよく書かれるのは「客人」また「稀人」もしくは「異人」←皆、まれびとと読ませます。
民俗学的なお話のお好きな方ならよく御存知と思いますが、いわばお客さんなんだよね。
但し、単なる来訪者という意味での客ではなく、まれにしか訪れて来ない異郷の人。
もっと現実的に表現すれば、共同体の外からやって来る見知らぬ人とでもいうのでしょうか。
さらには、現世ではなく異世界からの訪問者ともいえるかな。
折口信夫は古代人がこうしたまれびとを歓待したことに注目しました。そうして・・・
彼らはまれびとを他界から来訪して人々を祝福する神の権化であると指摘しました。
つまり二通りの意味があるのね。異郷からの来訪者であると共に他界からの来訪神であると。
まれに訪れてくる神、もしくは霊的な存在、それが、まれびとです。
私たちによく似た姿をしているかもしれないし、或いは異形の者であるかもしれない・・・。
【広島県尾道市のまれびと、ベッチャー】
これは昔から定義されてきた言葉ではなく、民族学者の折口信夫が提示したものです。
外部からの来訪者をもてなし食事を出したりする慣習は古くからありましたが、そうした慣習の
根底にあるのは「まれびと信仰」というものだと・・・。
閉ざされた共同体に或る日突然訪問した異界からの訪問者、自分たちの知らないことを教えて
くれたり与えてくれたりする。形のあるモノかもしれないし知恵や情報かもしれません。
自分たちにとってプラスになる、役立つことを教えてもらえるので、歓待しもてなす・・・。
【画像引用:諸星大二郎『黄泉からの声』】
では、何処から来るのか?遥か彼方の海の向こうの世界からかもしれないし、或いはあの世?
自分たちの住む現世(うつしよ)ではない、霊的なものが住まう常世(とこよ)
からやって来る。それは仏教の普及以前の土着的な信仰に近いものでしょうね。
こうした概念を提唱した折口信夫はまれびと信仰を日本の民族宗教の根幹をなすものであると
重視しました。こうした信仰心は遡れば相当の古代、縄文の頃にまで行きつくかもしれません。
【画像引用:諸星大二郎『黄泉からの声』】
日本列島の各地にはそうした「まれびと」つまり来訪神の訪れを祝うものが数多く残されています。
こうした異形の神は不思議と海沿いの町に現れるんだよねー。有名な秋田のナマハゲ、山形の
アマハゲ、能登のアマメハギ、広島のベッチャーなど・・・。興味深いのは鹿児島県トカラ列島の
悪石島に伝わるボゼですが、明らかに南洋諸島の文化をそのまま受け継いでいるような・・・。
【画像引用:離島経済新聞 http://ritokei.com/article/】
このボゼは、お盆の終わりに現れるとされていますが、その出現理由には諸説あり、お盆の時期に
先祖の霊とともに悪霊も現世にやってくるので、その悪霊を追い払うためという説があり、これは
ハロウィンの根底にある考え方とよく似ていますね。
岩手県にお住いのsnowman氏からお借りした囲炉裏の写真をもう1枚・・・。
撮影場所は「苫屋」(とまや)さんという民宿&カフェです。
この「苫屋」さんは、築150年以上の南部曲がり家の古民家をそのまま利用しておられ、御夫婦
二人だけで営んでいらっしゃいます。ちなみに、お部屋の数は3つだけで電話もありませんが
国内外でも有名な、知る人ぞ知るお宿であります。
※2016.08.23 ( ^ー゜)σ 藁葺き屋根に降る雨(下までスライドしてね)
※2016.08.23 ( ^ー゜)σ TOMAYA/(鉄瓶を中心に写されてます)
リブログ記事以外に苫屋さん関連の記事はコチラを↑
こうして囲炉裏の上に柿を吊るして燻し、干し柿にするのは初めて見ました。
スモーク風味になるのでしょうか?
当初はこの吊るし柿、柿簾(かきすだれ)で詠む予定でしたが、秋の季語なんだよね。
なので、せっかく珍しい囲炉裏を見せて頂いたので囲炉裏の句を・・・。平凡な句ですがw
絵の構図通りに秋の吊るし柿と囲炉裏と両方を入れると異なる季節の季語が入った季違い
になるんですよねー。絶対にダメという訳ではありませんが、印象の強い季語同士ですから
やはり止めた方が無難でしょう。
でも、この苫屋さんの囲炉裏端に来るのはどんなまれびとでしょうか?
地域が地域だけに、南方系のまれびとではないような・・・もしかすると こういうタイプ?↓
白髪のお爺さんですが、実はこの画像は北欧神話の最高神・オーディンのイメージ画なんですよ(爆
キリスト教普及以前の北欧神話もなかなか興味深いのですが、オーディンが”片目の神”である
ことが更に興味深い、まるで柳田 國男の・・・いやいやいや、切りが無いのでもう終わりましょう。
それでは、今日はこの辺で・・・またね。 そして snowmanさん、本当にありがとうございました☆
【今日は久々に諸星大二郎大先生の漫画を引用しました~】