注:スンリさんの妄想小説第6話です。
前回のお話はこちら。
『GG BE 5』
今回は、ヌナサイドのお話です♪
終わらないのでとりあえずここまで(^o^;)
『先輩のメンバーにも紹介したいし、絶対来てよ』
スンリにそう言われて、嬉しかった。
ただの“セフレ”には、きっとそんなことは言わない。スンリは自分のことを特別な存在として意識してくれているんじゃないか。
無意識のうちに、そんな傲りが生まれて、年甲斐もなく浮かれてしまっていたのかもしれない。
過ちは、スンリのこの誘いに乗ってしまった時から始まっていた。
「ヌナ!あなたがすんちゃんのヌナですか?」
マネージャーを名乗る男に案内されて、楽屋にたどり着くと、真っ先に、細身で愛らしい雰囲気の男が話しかけて来た。
(うわぁ、クォン・ジヨン。本物だぁ)
間近で見るジヨンは、ステージの上で見るよりも幾分か親しみやすい空気をまとっていた。だが、やはり、隠しきれないスターのオーラも感じる。同じグループのメンバーなのに、スンリとは全然違う。
(私の前にいるスンリは、何処までも普通の男の子だから)
二人きりでいる時は、芸能人のオーラなんて一切感じない。街を一緒に歩いていても、気付かれることもない。二人でいる時は、それが嬉しいけれど、テレビやライブなどで“BIGBANGのV.I ”を見てしまうと、寂しさに押し潰されてしまいそうになることがあった。
二人きりでいる時も“BIGBANGのV.I ”を感じさせてくれた方が、まだ、諦めがついたのかもしれない。二人でいる時は、ただのイ・スンヒョンだから、余計な期待をしてしまう。
素のままの姿の中に“G- DRAGON”を感じさせるジヨンを見ながら、そんなことを考えた。
「はじめまして。BIGBANGのリーダーのG- DRAGONです。えぇーとぉ、俺はぁ、すんちゃんのぉ、お兄ちゃん?です。ジヨンって呼んでください!」
ジヨンはスンリほど日本語が得意ではないようだが、一生懸命日本語で挨拶をしようとする姿からは誠実さが感じられた。辿々しい日本語が、愛らしくもある。
もっと気難しい人かと思っていたが、機嫌がいいのか、にこにこ笑いながら話しかけてくれる。
「ヌナはぁ~。おれよりもヌナですかぁ?」
「あ、はい…。ジヨンより歳上です。ごめんなさい」
「どうしてあやまるの?ヌナがヌナで、俺はうれしいです」
少し不得手なジヨンの日本語には、スンリにはない可愛らしさがある。ジヨン自身の純粋さが滲み出ているようで、見ていると微笑ましい気持ちになる。
(スンリも、出会ったばかりの頃はこんな雰囲気だったかなぁ)
まだ、日本語が今ほど得意ではなかったスンリを思い出す。出会った頃は、まだ少年のあどけなさが残っていて、今よりも細身で頼りなくて、自分が守ってあげなくちゃという気持ちにさせられたものだ。
懐かしい記憶を思い起こしながら、ジヨンと話していると、不意に強い視線を感じた。はっとして視線を感じた方向を見ると、スンリがじっと自分を見つめていた。
鏡の前に座って自分に視線を向けて来るスンリは、出会った頃にはない大人の色気をまとっている。男を感じさせる視線に、鼓動が早まった。
「ヌナ」
スンリが漸く声を発して、微笑んだ。気のせいだろうか?今日の笑顔は、いつもより数段大人っぽくて、色っぽい。
(メイクのせい?)
少し前まで、少年っぽくあどけない昔のスンリを思い出していたから、余計にそう感じるのだろうか。男らしくて、ドキドキする。
「今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ、楽屋に招待してくれてありがとう。ジヨンって可愛い人ね」
内心の動揺を悟られたくなくて、仕事用の笑顔を作った。周りを見る余裕もないから、そのせいでスンリの様子が変わったことにも気付かない。
「折角来てくれたのに、ごめんね。俺、少し、MCの打ち合わせがあって…」
「いいのよ。仕事でしょ。しっかりやりなさい」
「ありがとう。ジヨンヒョン、もう少しだけ、ヌナの相手よろしく」
「いーよぉー」
ジヨンの返事を聞くと、スンリは楽屋から出て行ってしまった。ライブ前だし、ゆっくり話せないのはわかっていたが、少しだけ寂しい。
「ねぇねぇ、ヌナ」
スンリの消えた扉を見つめてぼーっとしていると、ジヨンに軽く袖を引かれた。
「今日はおとまりですか?」
「え?…ああ、ホテルを取ったので、明日、朝一番の便で帰ります」
「じゃあ、なごやのライブはきますか?」
「ごめんなさい。仕事で…。今日しか来れないの」
その言葉を聞いて、ジヨンはニコッと微笑んだ。
「じゃあ、今日しましょう♪」
「え?」
「すんちゃんのぉ~、おたんじょうび!おめでとう!3人で!」
どうやら、ジヨンは、3人でスンリの誕生日祝いをしようと言いたいらしい。スンリの誕生日は2週間後。ナゴヤドームでは、ファンによるサプライズ企画も用意されているようだ。少し早いけど、名古屋に来れないなら今日やろうとジヨンは言いたいのだろう。
(スンリは、優しいお兄さんと一緒に仕事をしているのね)
スンリは愛されているんだなと感じて、嬉しくなった。そんな人が、自分を誘ってくれたことも嬉しいし、スンリの誕生日を祝えることも嬉しい。
それに、終演後にも会う約束をすれば、少しでも長く、スンリと一緒にいられるかもしれない。
「いいですよ。やりましょう。お祝い」
「本当?やったぁー!」
ジヨンはとても嬉しそうに言うと、近くにいたスタッフに声をかけ、韓国語で何やら指示をし始めた。しばらくすると、そのスタッフに書かせた紙を手渡してこう言った。
「今日のホテル。部屋の前に来て、ノックしてね」
紙には、ホテルの住所と名前、部屋番号が書かれていた。
スンリの誕生日を祝いたいと言われたから、そんなものを渡されることに、何の疑問も抱いてはいなかった。頭の中には、スンリの喜ぶ顔が浮かんで、ワクワクする気持ちで一杯だった。
メンバーに紹介されて、まるで彼女のような気持ちになって、浮かれていたのが間違いだったのだ。
まさか、この後、自分がスンリとの別れを決意することになるとは知らず、ライブの間もずっと、甘い夢の中で、酔いしれていた。
画像拝借致しましたm(__)m