意外に知られていないが、中国 でのカード 発行枚数は現在13億枚にも達している。人口13億人で計算すれば、ほぼ1人に1枚の普及率だ。ただし、そのうちの12億3000万枚は、銀行預金残高の範囲内で決済金額が引き落とされるデビットカード。信用枠(限度額)の範囲内で後払いが可能なクレジットカードは約7000万枚にすぎない。とはいえ、いまやショッピングや食事の代金を現金払いではなくカード払いにする人が非常に増えている。インターネット人口が2億1000万人に達した中国。ネットショッピングやネットオークションの決済もカードが主流だ。

  これほどまでに中国 でカードが普及した背景には、国主導で「カード社会」の発展を積極的に推進してきた事情がある。年率10%以上の高度経済成長を実現している中国だが、これまでの経済発展は、おもに国家建設のための公共投資や好調な対外輸出に支えられてきた。経済成長を支えるもうひとつのエンジンとして、中国は国内消費の拡大を目指している。その起爆剤として、カード 払いの普及を促してきたのである。

  中国 が本格的な「カード社会」に突入する大きな転機となったのが、2002年の「中国銀聯(ちゅうごくぎんれん)」設立である。それまでも、中国の銀行はそれぞれデビット機能付きのキャッシュカードを発行していたが、発行した銀行以外のATMでは現金が引き出せず、他行の加盟店ではショッピングや食事の支払いができなかった。地域間のオンラインネットワークも統合されておらず、北京で発行されたカードを携行して上海出張に出向いても使えない状態だった。多額の現金を持って旅行に出掛けざるを得なかったのである。

  しかし、全国の銀行間オンラインネットワークを統合して運営する「中国銀聯」の誕生によって状況は一変した。どの銀行が発行したキャッシュカードでも、「銀聯」マークの付いたATMや加盟店であれば利用可能に。2007年末現在、銀聯のATMは中国全土に14万台、加盟店は74万店にも達している。国際カードとしておなじみのビザ、マスターカードですら、中国国内の加盟店数は20万店前後とされるから、中国銀聯が中国国内でいかに大きなネットワークを築いているのかがわかるだろう。

  日本で唯一、加盟店開拓について銀聯と提携関係を結んでいる三井住友カードの朝田充紀氏は、「中国国内での銀聯の取扱金額は、06年の1兆8000億元(約27兆円)から07年には3兆2000億元(約48兆円)に倍増。小売り総額に占める銀聯の取扱金額の割合も、設立初年度(02年)の2.2%から07年には11%まで増えています。中国で『カード社会』が急速に発展していることを実感します」と語る。

  三井住友カードは07年12月、日本初の銀聯カード「三井住友銀聯カード」の発行を開始した。日本から中国への旅行者、長期滞在者が中国国内74万店の銀聯加盟店で使え、支払い金額は後日、日本の銀行口座から円建てで引き落とされるしくみ。中国のカード社会化の進展によって、日本人観光客にとっても、多額の現金を持ち歩かず、キャッシュレスで安心・快適に中国旅行が楽しめる便利な時代がやって来た。