ガイドが取る手数料を批判した地元の共産党機関紙への反発が発端だが、「観光都市・桂林」のイメージ悪化を懸念する市政府は「異例の早さ」(地元旅行会社幹部)で事態収拾に乗り出している。
騒動のきっかけは、7月26日付の市党委機関紙・桂林日報が、観光地の入場料をガイドが不当につり上げ、差額を着服しているとの批判記事を掲載したこと。ガイド側は「記事は事実に反する。正当なガイド手数料だ」と猛反発。関係者によると、ガイド数千人が市政府に押しかけ、警官隊が400人以上を一時拘束する事態になった。
桂林日報は29日、「記事に不適切な部分があった」と謝罪記事を掲載したが、ガイドの怒りは収まらず、8月1日からのストを呼びかける携帯メールが飛び交った。結局、黄丹副市長がスト前日になって「不適切な報道」を認め、実態調査も約束したため、ガイド側はストを見合わせた。
だが、ガイドの怒りはくすぶり続けており、「政府の素早い対応は評価するが、今後の展開次第では騒動が再燃する」(30代の男性ガイド)との声は強い。
ガイドの不満は、旅行ブームに伴う行き過ぎた値下げ競争という中国旅行業界の構造的問題に根ざしている。
旅行会社は「桂林3泊4日で550元(1元は約16円)」などと赤字覚悟の低価格で客を集め、現地でのオプショナルツアー参加費や客を紹介した土産物店からの礼金で利益を出す。桂林の女性ガイド(26)は「本来4時間350元の漓江(りこう)下りを30分から1時間で終わらせ、何も知らない中国人客につけ込んでそのまま金を取る旅行会社もある」と明かした。
格安のツアー費はガイドの給料を直撃する。オプショナルツアーへの参加や土産物店での買い物が少ないと、ガイドの給料も増えない。四川省からの団体客を案内していた男性ガイド(28)は「旅行業界の構造的問題を批判せず、手数料だけを批判するのは、ガイドに死ねと言うのと同じだ」と語気を強めた。
男性の基本給はわずか月300元。これに、オプショナルツアー参加者数や旅行会社指定の土産物店での買い物実績に応じて会社から「奨励金」が支払われるが、それでも手取りは1000元ほどという。
ツアーの値下げ競争に伴うガイドの低い給与水準は中国各地で問題化している。海南省や四川省などの観光地ではガイドが実際にストを行った。外国人旅行者を主に扱う桂林の旅行会社幹部は「世界的に有名な桂林でのストは普通の観光地でのストとは意味合いが違い、中国の観光業全体のイメージ悪化を招きかねない」と指摘している。