人間を48年やって来た自分が、
「一つの映画作品に恋をする。」
と言う初の経験をしているのが、伊藤智生監督の映画
『ゴンドラ』
です。
30年以上前の1985年に、当時無名だった伊藤智生監督ほかの20代の若者たちが独立プロを立ちあげて撮影し、1986年に完成した作品です。
あらすじは、
『都会にあこがれて東京に出てきて、ゴンドラに乗って、ビルの窓を拭く仕事に明け暮れる青年・良(界健太さん)。
そして、離婚した母(木内みどりさん)と暮らすかがり(上村佳子さん)も、父母の争いに傷つき、心を閉ざして、誰にも笑顔を見せる事が出来ない女の子が本作の主人公です。
かがりは少しづつ心を開いて行き、良も大事に思うようになって行きます。
やがて二人は、良の故郷・下北半島へ向かいます。
そこで二人を迎えるのが、半身不随の夫(佐藤英夫さん)を介護しながら明るく働く良の母(佐々木すみ江さん)でした。』
こんな感じでしょうか?
自分には上手く伝えられませんので、詳細は以下のアドレスをご覧ください。
・映画『ゴンドラ』公式サイト
2017年1月27日(金)[28日(土)早朝]に、LOFT9 Shibuyaで行われた
『ゴンドラ前夜祭』
も自分は観に行ったのですが、もう2年前の出来事になるとは…。
月日の経つのは速いものです。
今回、
『ポレポレ東中野』
にて、再度の上映が行われています。(4月19日金曜日まで)
ちなみに、前回は2017年2月11日(土)~3月3日(金)まで上映されていて、その時と同じデジタルリマスター(DCP)版での上映となっています。
(上映館によっては、35㎜フィルム版での上映も行われていました。)
今回の東中野ポレポレでの再映は、2月17日にお亡くなりになった佐々木すみ江さんの追悼上映会となります。
佐々木すみ江さんは、良の母親役でご出演されていました。
4月8日(月) 20時からニコ生で配信された、伊藤智生監督と加藤純一さん(Youtuber)との番組
『ゴンドラ特番トークショー』
内のトークによると…。
「佐々木すみ江さんの追悼上映会をやらせて頂きたいので、1日だけでも上映させて頂けませんか?」
と、ポレポレ東中野の支配人さんに伊藤智生監督がお電話をされたそうです。
「分かりました。日程を調整します。」
と支配人さんからお返事があったそうですが、蓋を開けてみたら、1週間のスケジュールが確保されていたとの事でした。
おかげさまで、初日(13日)は鑑賞不可だった自分も、再び観に行く事が出来ました。
ポレポレ東中野の皆さんには、本当に感謝です。
今回の追悼上映会は、14時40分からの1回のみの上映となっています。
14時頃に劇場に到着したら、物凄い人が並んでいてビックリしました。
ポレポレ東中野は、ネットでのチケット販売を行っておらず、当日券のみの全席自由席制となっています。
チケットに書かれた整理番号順の入場となるのですが、自分のチケットの番号が60番となっていて、その後もお客さんが次々とおいでになっていました。
伊藤智生監督も、上映開始時刻の15分前位においでになって、入り口で一人一人に声をかけて下さっていました。
ジャック&ベティでの上映の際に伊藤智生監督からのご質問に答える形でお話させて頂いたのですが…。
この映画を観る際は、心臓のバクバクが物凄いのです。
今回は、我が家から湘南新宿ラインで新宿乗り換えで東中野までやって来たのですが、横浜駅辺りから鼓動が高まり、入場時辺りが一番凄かったです。
前回よりも心臓のバクバク具合が凄いのは、この映画『ゴンドラ』と言う作品に、もっともっと恋をしたと言う事なんでしょうね。
上映開始直前、監督の
「ゴンドラ、間もなく始まります!!」
の大声が2回ほど聞こえたのち、上映が始まりました。
今回は佐々木すみ江さんの追悼上映会なので、登場される後半に絞って書かせて頂こうと思います。
この映画のロケは、青森県下北郡佐井村を拠点に行われ、同村の仏ケ浦や牛滝の洞窟などの美しい風景が映像に残されています。
撮影後30年経ってしまっているので、現在では大きく変わってしまっているかと思われるのですが、この下北の場面は、何度観ても良いですね!
かがりちゃんが都内から下北へ行き、自然に笑う事が出来るようになってゆく姿が、本当に素敵なんです。
また、わが地元の片瀬海岸の色と違って、海の色が透明に近い青なので、凄く綺麗なのも凄いです。
佐藤英夫さん演じる良の父を介護しながら、明るく働く良の母を好演されていました。
佐藤英夫さんについても言える事ですが、表情や仕草が物凄く自然で、演技をしているという感じには見えませんでした。
「普段、生活している姿をそのまま記録しただけ。」
と言う感じなのが凄いです。
我が家の事で大変恐縮ですが…。
亡くなった母方の祖母が、良の母みたいな感じだったので、そのイメージと重なりました。
本当に、地方の寒村で働く母親って、(今は違うと思いますが…。)『ゴンドラ』制作当時はあんな感じの人も多かったです。
これは、自分の目で見た印象なのですが、母の実家周辺の皆さんはあんな感じでした。
(ただし、母の実家は山間部で、冬は雪が4メートル以上積もる豪雪地帯なので、漁村部の生活とは違うのですが…。)
終映後、トークイベントが行われました。
この日は、伊藤智生監督と、伊藤監督の次回作の主演が決定している女優の朝岡実嶺さんでした。
時間にして10分有ったか無かったか?
と言う短い時間だったので、伊藤監督が主にお話されました。
佐々木すみ江さんの自然な演技については朝岡さんも自分と同意見だったようです。
伊藤監督によると、
「映画を1本も作った事が無い、見ず知らずの若者が突然話を持って行ったのに、撮影を快諾して下さった。」
「ロケ地(佐井村)付近は、その周辺部とは異なる『南部弁』が使われているので、言葉が違う。佐々木さんは、撮影が始まる前にご自分のセリフを現地の人に吹き込んで貰ったカセットテープを送って貰い、ウォークマンでずっと聞いていた。」
「ロケ初日、方言指導の方に佐々木さんのセリフを聴いて貰った所、現地の人が聴いても(イントネーションが)完璧だった。」
「五右衛門風呂にかがり役の上村佳子さんと入る場面で、当時小学5年生だった上村さんが入浴をためらった際、『こんな年のおばあちゃんが(カメラの前で、裸で)入るんだから!』と励まされた。」
とお話されていました。
伊藤監督が、次回作についてもお話してくださいました。
それによると、東京オリンピックに沸く1964年(昭和39年)、伊藤監督が生まれた麻布の路地裏の光景をモノクロで撮影されるとの事でした。
伊藤監督のお母さまがうつ病になられ、その看病で
「オリンピックどころでは無かった!」
との事で、お母さまの心が次第に壊れてゆく姿が原風景にあるそうです。
その原風景を描くというものになるそうです。
お母さまを朝岡さんが演じ、今年の年末か、来年(2020年)の初頭にクランクインの予定との事でした。
トークイベント終了後、場外でパンフなどを買われたお客さんに対してのサイン会が行われました。
こちらも長蛇の列でした。
恐らく、大部分のお客さんが、そのまま列に並ばれていたのだと思います。
劇場スタッフの方も、次の作品の上映が迫っている中で、懸命に誘導をされていました。
自分は、どうしても欲しかったサントラCDを、ようやくGETしてサインを入れて頂きました。
19日(金)まで上映されていますが、平日昼間1回のみの上映で再訪は難しそうですが、可能であれば一度は観に行ければと思っています。
本当に素晴らしい作品なので、この機会に劇場に足をお運び頂ければと思います。
以下、勝手に告知です。
映画「ゴンドラ」追悼特別上映
2019年4月13日(土)~4月19日(金)
上映館:ポレポレ東中野
連日14:40開映
入場料:全日一律1,500円(当日券のみ)
※連日、伊藤智生監督とゲストによるアフタートークが予定されています。
映画の詳細につきましては、以下のアドレスまで。
・映画「ゴンドラ」公式サイト
予告編動画(2017年リバイバル上映 劇場版)