わが家は1991年の春、それまで住んでいた横浜から、南房総の山の中に引越しした。
その引越しを思い立ったのはそれより四年ばかり前だったが、そのころ何も知らない子供たちは、新しい学校にゆけるというので大喜びだった。
しかし、今では都会と田舎の違いが十分分かるようになった申二のサッちゃんは、この新しい環境が大いに不満である。
「家出するからね」というような物騒なことをいって、時々父親の肝を冷やりとさせる。中一のジュン坊はあまり学校の話をしないが、大丈夫だろうか。
この二人の子供たちが何とか無事に、この伝統ある農村共同体に順応してくれること、それがそのころの私の最大の関心事だった。