私のところに不動産屋から電話で、留守電に保明が家賃滞納して家財道具一式そのまま置いていなくなったとメッセージが入っていた。
私はすぐに保明に電話すると、勤めていた会社もそのまま無断で欠勤したまま、新聞屋さんで住み込みで働いてると言っていた。
そして、
「滞納した家賃とか契約解除のお金とかどうするの?
私はもう昼間の仕事しかしてないから払えないよ」
と言うと
「そのままで何もするな」
と言われた。
前に住んでたところもそのままで、いい歳してほんとにいい加減な人…。
私一人ではどうにも出来ず結局、放置になってしまった。
その2~3週間後、今度は和也がやらかした。
新聞屋さんの業界用語で「天ぷら」をした。
「天ぷら」とは架空の契約をして販売店の店主を騙して歩合給を上げることらしい。
それがバレて給料から店の損失分と家賃を引かれてほとんど手元に残らない状態で解雇、寮も退去しなければならなくなった。
私 「この先、どうするの?行く宛はあるの?仕事は?」
あまりに急なことで私は問い詰めるように言った。
和也 「仕事も行く宛もない…」
私 「はぁ………………(ため息)」
私は一瞬、和也を捨てて保明のところへ戻ろうかとも考えた。
そしてまた1から新たな居場所探しをしなければ……と。
すると和也が何を血迷ったのかこんなことを言い出した。
和也 「旦那、今、新聞屋の寮にいるんだろ?そこに入れないかな?旦那、怖いけど男気あって嘘だけはつかない人だって俺は信じてるから…」
私は、この男は何を言ってるんだ?バカにも程があるとさえ思ったけど、このままじゃ私までホームレスだと思い、仕方なく保明に電話した。
事情を説明すると
保明 「Rは別居中だったのを呼び寄せるってことにして、お前(和也)は俺の後輩ってことにして話してみるから。
その代わり、入ったら絶対、今回みたいなことはするなよ!」
和也は今後、不正はしないことを約束して、保明が働いている新聞屋さんの寮へ移り住むことになった。
和也の起こした不祥事のせいで一時はどうなることかと思ったけど、なんとかホームレス生活を免れた。
でもそれは、新たな波乱の幕開けだった。