※こちらの記事は一部、性的な表現をしていますのでご了承ください。
 

 

最後の悔しさ

 

 

 1、とどめの言葉

 2、魅由鬼の潔さ

 3、総括

 
 
 
 

 

  1、とどめの言葉

 

怯えてもはや立ち上がることもできない魅由鬼に、

幽助はさらに追い討ちをかける、とどめの言葉を放ちます。

その辺りについて話していきます。
 
 
 

心が女だって言うなら、中途半端な真似してねえで、体も心も両方きっちり女になっちまえ!

 

魅由鬼は幽助からこんな言葉を投げられます。

 

つまり、

心が女なのに体は男のまんまなんて中途半端だ、どっちかに統一しろ!

と言うのです。

 

 「心は女」と主張する魅由鬼に対し、

 

うるせえ!ふざけんじゃねぇ!

てめぇについてる物は何なんだ!

 

てめえは男だろ!だったら男らしく、中途半端なことすんな!

心が女だって言いてえなら、下もちゃんと切り落とせ!

そこがある限りてめえは男だ!

 

と。

 

 

幽助は魅由鬼に、

「女として生きたいのか男のまま生きるのか、お前はそれを決心できてない。そのくせに心は女だなんてふざけたことを言ってやがる。」

と、その覚悟のなさや甘さを責めています。

 

男のくせに白黒はっきり決めずに中途半端でいてんじゃねぇ!

性器を除去して女になるのか、性器をそのままにして男でいるのか、てめぇも男なら男らしくはっきり決めろ!」

と。

 

 

確かに幽助の言ってていることはある意味で見れば正論です。

例えばお金は欲しいと言いながら仕事はしないと言えば筋が通っていない話となるように、

女と見てほしいけど体は変えないといえば、幽助のように「ふざけるな!」となる考えも理解はできます。

 

 

しかし、それはあまりに厳しすぎる意見です。

手術自体もリスクの高いものです。

 

それに魅由鬼の発言からは、

「女としては見てほしいけど、体は変えていない。」

ということしかわからず、変えたくないとまで思っているかはわかりません

 

それに何より、彼女は下にある以外は全て女性です。

髪も伸ばして胸も膨らまし、女性らしい色気ある服を着て脚を見せつけ、話し方や振る舞いに加え、女性らしい声を出せるまでになって女性らしい体や顔まで手にした。

並大抵のことではここまではなれませんし、彼女はそれだけの努力をしてきた

それでも

「結局のところ付いてるもんはそのままにしてるてめぇは半端者だ。」

と非難を受けているのです。

 

そんなことしなくても彼女は充分女性らしく、

このような非難を受ける筋合いはありませんし、そこまでする必要があるとは思いません。

 

 

しかし幽助はそんなこと一切認めません

それ以外の全てがどれだけ女性らしくあろうと、手術のリスクがどれだけ高かろうと

 そんなことお構いなしに、やれと簡単に言うのです。

魅由鬼は妖怪なので人間と同じで見るものじゃないかもしれませんが、男性器の除去は容易ではありません。それ自体危険を伴いますし、精神的に不安定になったり一生注射を打ち続けないといけなかったりもするわけです。決して簡単に決断できるものではありません

 

それでもやれと。

そんなこと知ったことじゃないと。

 

それもできないなら決して女とは認めない。

それどころか「心は女」と主張することさえ許さないのです。

 

 

 

やはり幽助は、下にそれがあるというその1点だけでどうしても認めてくれないようです。どれだけ女性らしさを手に入れ、そのためにどれだけ努力していても、下のものがある限りてめぇは男だと、決して女性として認めないのです。

 

 

そして魅由鬼にあれだけのことをしながらこのような態度でいるということは、

ちゃんと男性器を取り除かない限りは女性としての屈辱を与えることも厭わない

彼女がそれで傷つくことなど顧みない

たとえそれで女性として屈辱や恥辱を受けたとしても

それに文句を言うことさえも許さない

ということになります。

 


 

ただでさえひどい言葉なのに、

 

それを、恐怖に怯えこれ以上立ち上がることはできないであろうほどに弱った魅由鬼にかけるのです。

 

 

 

それによくよく考えると、

幽助は正当に主張しているようですが、自分が「女にも手加減しない」と言いながらそうしなかったことを棚に上げています。魅由鬼に嘘をついたことに言及していません。

それに、男にも女にもなれていない中途半端な状態だったとしても、それを理由にわざと胸を殴っていいとはなりません

冷静に考えると、幽助には説得力自体ないのです。

 

 

 

 

  2、魅由鬼の潔さ

 

普通に考えて相当にひどいこと言われていますし、聞く必要もありません。

あまりに情がないですし魅由鬼の心に対する配慮が全くありません。
それに魅由鬼は精神的にも弱っているため、こんなこと言われたらかなりきつい怖いと思います。
 
 
そもそも幽助は不埒な行為を行っておきながら煽るように馬鹿にする発言を行い
魅由鬼はそんな幽助が許せず、何度殴られても何度地面に叩きつけられてもそのたびに立ち上がった。
それでも一矢報いるどころか指一本触れることさえできなかったそれでも諦めずに何度も幽助に立ち向かいました。

そのあげくひどい裏切りにまで遭ったわけです。

 
 

そんなひどいことをした相手が悪びれる様子もなく魅由鬼のことを痛烈に批判している。

幽助の言っていることの意味はわかりますが、ここまで求めるなんて異常ですし、こんなことを言われた上にあんな、肉体的にも精神的にも酷い目に遭わされる魅由鬼が不憫でなりません。
 
 
 
 

それでも魅由鬼は、「負けたわ。とその言葉を受け入れます

耳を疑うような事態ですが、魅由鬼の不憫で健気な性格がこうさせたのでしょう。恐ろしく真面目で誠実な性格が自分の弱さを認めさせたのです。
 
 
彼女にとって女としての辱めを受けることは、絶対に許せない行為です。そして心が女だという主張もまた、曲げれない信念で、男性扱いされることも許せないことです。
 
しかしそれらを支えているのは
「自分はそう主張できるぐらい非常に女性らしいという自負です。
 
実際その通りだと思います。魅由鬼は惚れ惚れするぐらい美しい女性です。
だからこそ、そんな風に思っているくせに体はそのままでいい、という自身の考えが中途半端だと気付かされショックだったんだと思います。
(実際、個人的には魅由鬼が甘いとは全く感じませんが。)
 
 
 
 
幽助から散々受けた許されない行いも、正直理不尽とも思える幽助の言い分も、全て自分に非があるとすんなり受け入れた。
こちらの方が悔しい気持ちに襲われるほどに、魅由鬼の潔さ、自分への厳しさは尋常ではありません。観ている側が消化しきれない気持ちの中、一番の犠牲者であるはずの魅由鬼が真っ先に全てを受け入れるのです。
 
 
その目はうるうるしており、泣きそうになっています
正直、幽助のことも怖かったと思います。それと同時に、自分の愚かさを思い知らされた悔しさが溢れているのでしょう。
間違っていたのは私だったなんて。
全て受け入れたと言っても魅由鬼はどれほどの悔しさに耐えたことでしょう。許せないと思っていた相手への怒りが全て自分に返ってきたのですから。その悔しさはとても想像に叶うものではありません。あまりにも自分に厳しすぎます。見ていて胸が締め付けられるほどです。
 
散々痛めつけられ心身共にズタボロの中であれだけの辛い仕打ちを受けた上、今度は魅由鬼自身が、考えの甘い自分を責めて痛めつけることになるのでしょう。もしかしたら今まで徹底的に女性としてやってきた分、急に自分はまだ男なんだと感じ、今の格好や今までの行いに対して猛烈に恥ずかしい気持ちに苛まれているなんてこともあるかもしれません。
その姿勢が自分をこれ以上痛めつけないか心配になるほどです
 
 
そして今まで何度も気絶しそうになりながらも幽助への怒りから意地でも意識を失わなかった魅由鬼が、ここに来て自ら敗北を認め即座に気を失います。
 
 
 
その姿からも、今までがいかに強い気力で保っていたがわかります。それがふっと切れたこの瞬間、すぐに意識を失ったのです。
 
 
到底許せない相手、そんな相手が放った言葉である上に、その内容も心無い言葉で逃げ場をなくして彼女を追い詰める、心を抉るような、とても受け入れられない言葉です。本来聞く必要もない、むしろ非難されるべき言葉です。
 
しかしそんな言葉を魅由鬼は、全て自分の甘さが引き起こしたことが原因だから自分が悪いんだと自らの責任とすぐに受け止め自ら敗北を受け入れたのです。こんなことができるなんて、

その器量いかに大きいかが見て取れます。

 

 

 

 

 

 

ちなみに余談ですが、その後桑原が、「本当に男か?俺にはどうしても信じられねえんだが・・」と言い、
「細い脚ですね〜」なんて言いながら、
魅由鬼が意識を失い何をされても拒絶も何もできないのをいいことに、魅由鬼の性器を確認するためスリットを掴んで捲ろうとします。
 
その光景を見ると、男扱いされたくないという思いや、攻撃が幽助に全て打ち破られ散々無茶苦茶にされてやり返せない上に騙された失意の上に、自身の愚かさにも気付かされ傷心して弱っている所につけこまれているようで、そんな中でまた別の形で不埒なことをされようとしている魅由鬼が不憫で仕方ないと思ってしまいます。
 
 
 

 

  3、総括

 

いかがでしょうか?魅由鬼という女性のイメージに変化はあったでしょうか。
見ているだけでときめいてしまほどに端麗すぎるその容姿
女である自分とは戦えないという相手の優しさを認めず、逆に女相手にも容赦しない姿勢を喜ぶストイックさ
何度もその体を痛めつけられながらも、何度も立ち上がり、まるで敵わない相手に何度も立ち向かう執念
その上更に、平気で嘘をつき自分を裏切った敵の言葉でさえも素直に受け入れる柔軟性
 
 
これだけの漢気(他にピッタリの言葉が思いつきませんでした)があったからこそ、戸愚呂は魅由鬼を気に入って部下に引き入れたのかなと妄想したりもします。
服装もどことなく玄海師範に似てますしね。
 
 
ジェンダー観については今の感覚からすれば色々思うこともあるでしょうが、この作品は、考察しながら気付かされましたが、この時代にしてはかなり深く描かれているんだなと感心しました。(私の妄想もかなり入ってる気もしますが・・)
 
 
 
 
 
以上、とんでもなく長くなってしましたが、少しはお楽しみ頂けましたでしょうか。そうであれば幸いです。
 
今までお付き合いいただきありがとうございました。これで魅由鬼考察は一旦終了としますが、番外編として幽助サイドの考察記事の続きや桑原編なんかもまた載せていきますので、よかったら見ていってください。
 
 
 

 

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