なぜ魅由鬼が「一番手」だったのか
幽助達が彼女達三鬼衆と戦うことにおいて、最初の壁として立ちはだかった魅由鬼。
しかしなぜ、彼女が一番手だったのか。そして彼女が幽助達に「余裕」を見せた本当の理由とは?
1、「一番手」である必要はなかった
久しぶりの更新です。
今回は、今まで意識していなかった、魅由鬼が一番手になった理由を考察してみました。
今までは順番について気にしてきませんでしたが、よくよく考えると引っかかる話です。
確かに「(数字)の角」となってるから「その順番なのかな」ぐらいに思っていたし、実際彼らの間でそういうルールがあるのかもしれません。
しかし今回の任務は明らかなイレギュラーです。
彼らは元々雪菜に涙を流させるために雇われた身であり、戦闘要因ではない。
この辺りは以下の記事で詳しく話していますが
普段の仕事も「魔物の売買」という、恐らく戦闘とは無関係の仕事です。
ならこんな時にまでそのルールを従順に守る必要はないはず。
それでも、そんな中で彼女が一番に出てきた理由は何なのか。
それを考察するとその深い理由、そして彼女の、狂気にも近い恐ろしい想いを感じたので、今回はその辺りについて話していきます。
2、「余裕」の態度は本心ではなかった
これを解くための大きなカギとなる疑問(と個人的に思っているもの)があります。それは、
なぜ彼女は、幽助達に余裕を見せるような態度を取ったのか?
です。
(今まで何度か触れているので簡単に話しますが)
幽助達に余裕を見せた彼女の態度は本心ではありません。
彼女は幽助達の前に姿を現した際、彼女は自信ある様子で、一見まるで彼らを見下すかのような、そんな、余裕を見せるような態度を取っていました。
しかし、いざ幽助との戦闘が始まると一変、その顔つきは真剣そのものになります。
このことからも、
彼女は決して幽助のことを侮ってなどいないのです。
(これも状況を考えれば当然かもしれません。
彼女からすれば、元々「雪菜を泣かす」という仕事で来たはずなのに、侵入者討伐という本来の業務とまるで違う仕事を命令されている上に、部下も何人も殺されているのです。
これは例えるなら、
アウトソーシングや派遣のスタッフとして、自社の同僚と共に行った派遣先に不審者が数名侵入した。すると自分たちに不審者を食い止める命令が出された。そしてその不審者によって後輩が次々に殺害され、次は自分がいかなければならない。
そんな状況であり、普通に考えて怖いでしょうし、幽助達のことを危険で恐ろしい敵だと思っていてもおかしくありません)
ではなぜ、本心でもないのにわざわざ余裕を見せるような態度を取ったのでしょうか?
3、戦いを求めていたのか?
このように「侮れない敵」にあえて余裕を見せる時とは例えばどんな時でしょうか?例えばこの時の彼女は、戦うことを求め、敵と戦うことに期待を抱いていたのでしょうか?
それ故、自信を見せるような態度をとれたのでしょうか?
確かに彼女は、「ふんっ」と鼻を鳴らしてにやっとするなどの挑発的な態度を取り、戦いを避けようとする桑原を引き留め、戦う意思を示した幽助に喜びを見せるなどしており、
戦いを求めているように見えなくもないです。
しかし先程も上げた、幽助に初撃を入れようとする際の彼女のこの時の表情は、
戦いを好み、それを楽しんでいる
という風には見えず、むしろ 何かしらの使命を果たそうと真剣になっている という風に個人的には見えます。
では戦いを求めていたわけではないなら、どうして「危険な敵」を前に、こんな相手を刺激するような態度を取ったのか。
また、彼女の「使命」とは何だったのでしょうか?
それらの答えをみつけるための大きなヒントは 彼女の性格にある と思っています。
4、彼女の性格
彼女には仲間意識、そして仲間のために自分が矢面に立つことができるという一面があります。
これも以下の記事の1で詳しく話しているので簡単に話しますが、
彼女は左京に自分たちが負ける方に賭けられた際に「私たち三鬼衆も舐められたものね」と言っている、
つまり、
「私も」でもなく「三鬼衆も」でもなく「私たち三鬼衆も」と。
これだけでも彼女の三鬼衆への仲間意識の高さを感じますが、
さらに言えば「私たちも」よりも、よりチームという意識を感じる、「私たち三鬼衆も」という言い方をしているのです。
「私たちは三鬼衆というチームなんだ」と。
彼女にはそういう意識を感じます。
加えて、左京という、自分より上の立場(クライアントの友人のような相手)の者が相手でも楯突いている。
しかもよく見ると、
「私たち三鬼衆も」と、「自分が」侮られたという怒りではなく、「仲間も」馬鹿にされたことに怒っている。
他の2人も黙っている中でです。
このように彼女には
仲間のために、自らが危なくなるようなリスクのある行動ができる
という一面があるのです。
そしてこういった一面を見ると、自分たちが馬鹿にされた時にとっさに
「私たち三鬼衆も」と自分以外のことも考えられる魅由鬼はやっぱりさすがだなと思います。
そんな彼女であれば、今回の件で自ら1番手を買って出ていてもおかしくはないと個人的には思います。
つまり彼女は、仲間のために、自らの意思で、リスクの高い1番手を引き受けたのではないでしょうか。
5、彼女の目的
もしそうだとした場合、その上で改めて「余裕あるように見せた理由」を考えると、色々見えてくるものがあります。
彼女の言動を改めて見ると
幽助達へのこういった挑発的な態度や桑原の引き留めは、一見、彼らを戦わそうとしているように見えます。
しかし彼女は (先ほどの真剣な表情に表れている通り)、勝てる自信や戦いへの喜びを抱いてるわけではありません。
むしろ先ほども言ったように何かの使命感を背負っているような様子です。
そう考えると
幽助達を戦わそうとしている、というより、正確には
敵の意識を自分に向けさそう、あるいは敵を逃さないようにしよう としているような気がします。
ではそれは一体、何のために?
6、彼女の狙い
ここからは想像ですが、
まず状況的に、
もしかしたら彼女は自分が負ける可能性も考えていたんじゃないでしょうか。
というのも、彼女は、その真剣な表情からも、幽助達が並大抵の実力じゃないことをもわかっていたはずです。
加えて部下が大勢あっさり命を奪われている状況、自分たちが戦闘員ではないことを考えれば、彼女が自分が負けることを予感していてもおかしくはありません。
しかしその一方で、彼女は何かしらの使命感を持っていた。何かを果たそうとしていた。
加えて、彼女には仲間意識、三鬼衆に対するチームという意識、何より仲間のために危険な役回りを自ら引き受けられるという性格がある。
これらのことを総合的に考えると
彼女は自らの身を犠牲にして、敵の実力、つまり幽助たちの実力を測ろうとしたのではないか。
そんな気がしました。
普通に考えて敵は危険。
普通に挑んでも勝つことはできない。
ならば、
自分が敵の標的となり、一身に攻撃を受けることで、敵の実力を少しでも炙り出そう。
そんな風に考えた。
そのために1番手を名乗り出た。
そして
その戦い(敵が自分に対してどんな戦い方をするか)を見て、どう戦うか決めてほしい。
自分がその実力を測る物差しになる。
そのために自分が犠牲になる。
そう他の2人に伝えた。
つまり、自分がやられることを前提に、少しでも自分の次に戦う仲間が勝つためのヒントを見つけ出そう
そんな風に彼女は考えたのかもしれません。
7、「余裕」を見せた目的
そして、その役目を果たすためにも、敵に自分を標的だと認知させる、自分に戦意を持たせる必要がある。
そのために、余裕を見せ挑発を取るような態度を見せた。
つまり、一見余裕を見せているとも取れるその態度は、その役目を確実に果たすためのものだった。
つまり、
敵の意識や戦意がしっかりと自分を向くように、そのために、相手を挑発し、自信があるかのような雰囲気を装った。
そうして、敵に自分が標的だと確実に認知させようとした。
敵が少しでも本気で向かってくるよう努めた。
だからこそ
敵の1人が自ら戦闘を放棄してくれそうになっても、それを制止してなんとか自分と戦わそうとしたし
もう1人の敵が自分を倒すことに乗り気になったことに対し、喜びを抱いた。
私は今日、死ぬかもしれない。そう思いながら、自らの手で、敵に殺される可能性をさらに上げていく。
そんな狂気じみた恐ろしいことを彼女はやってのけていたのかもしれません。
7、凄まじい精神
それにしても、もしそうだとしたら
相手が非常に危険で強い敵だとわかっていながら
自らその戦いの1番手を引き受け
さらにそんな相手のことを挑発し、戦意を自分に向けさせ、
その上、戦わなくて済みそうな相手(桑原)のことまで引き留めて自分と戦わそうとするなんて、
すごい度胸だと思いますし
ましてや彼女は戦闘員ではないのです。今回の任務だって彼女にとっては本来の業務の範囲外です。
それでもここまでのことをしているのですから
凄まじい使命感と覚悟だと思います。
彼女はそんな、自らの犠牲をかえりみない精神で、1番手を引き受け幽助達の前に現れたのかもしれません。
「 私はあなたたちにやられることなど恐れてはいない。私がやられてもあとの二人が私の意思を繋いでくれる。」
そんな想いを抱きながら。
今回は以上です。