前回の続き。

病院に着いて、お母さんに駆け寄る。
すごく痛がっている。

痛い、苦しい…
とずっと言っている。

15時頃に、痛み止め追加してもらう。

早く早く!早く痛み止め効いて!!
と願いながらお母さんを励ます。

「お母さん!痛み止め追加したからもう少しで効いてくるはずだよ!頑張って!」

背中さすったり手握ったりするけど、
痛みはどんどん増してきている。


15時10分。
看護師さんから、24時間面会okの案内をされる。

危篤状態や、患者が余命1日をきった時、
泊まり込みで24時間面会okになる
と最初の時に説明があった。

手が震えた。
お母さん、もうすぐ死んじゃうんだ。

すぐに、わたしの旦那とお兄ちゃんに報告した。

電話の声が震えた。

足もガクガクする。

だけど動揺してる場合じゃない。


お母さんが、激痛で悲鳴をあげている。
「あああ〜〜
痛い、痛い、なにこれ?!痛い…!」

身体を左右に動かして痛み苦しんでる。
何度もナースコールをする。
なかなか来ない。

やっときた!

「母がかなり痛がってるんです!
すぐに痛み止め追加してください!
鎮静もしてください!早くしてください!!!」

この時のわたし、パニックになってたと思う。

看護師さんが、
「痛み止めさっき入れてからまだ15分しか経っていません。30分経たないと追加はできません。」

そんな…


「お母さんごめん、もう少しだけ頑張って…
痛いよね、すごく痛いよね、辛いよね…」

泣きながら声をかける。

今まで見たことないくらい痛がってるお母さんの姿をただ見てるだけ。辛すぎる。

想像を絶する痛みだったと思う。

オキシコドンの量減らしたままだったから、
絶対に痛み止めの量が足りてなかったんだ。

鎮静薬も、最初は少しずつ入れて様子見ます
って言ってたから、きっと全然足りてないんだ。

なんでこんな痛みに絶えないといけない?
苦痛を緩和してくれるんじゃなかったの?


そうこうしてるうちに、お母さんが突然
舌を出しておもいきり苦しみだした。

「くっ苦しい!苦しい!どうしよう!苦しい苦しい!息が…!」

お母さんの最後の言葉だった。

まるで水に溺れてる人みたいな表情をして
頭をあげようとしながら舌を必死に出そうとしていた。

この時は、お母さんどうしたの?!なにがあったの?!
と思ったけど、後から調べてわかった。
「舌根沈下」だったんだと思う。

この時、お母さんと一緒にいたのは
わたしとお父さんだけ。

ナースコールを押していたけど
先生や看護師は来てなくて、
対応してもらえなかった。


お母さんが苦しみだしてから、
呼吸が変わった。

あー
あー
あー
と声と一緒に息を吐いている。

あらかじめ、末期癌の経過を調べてたわたしは、
これがどういう状況かすぐにわかった。

もうすぐ呼吸が止まるんだ…。

お父さんが、
「かなり苦しそうだな。看護師は一体なにをしてるんや!」
と言った。
けど、この時はお母さんはもう苦しくなかった
と思う。
あー
あー
と声を漏らしているのは一見苦しそうに見えるけど
実際は苦しさはもう感じていない状態
だとYouTubeで見たことがあった。

そのあと、下顎呼吸が始まった。

目を見開いたまま、顎を上下に動かす最後の呼吸だ。

お父さんが、
「お母さん涙流してる」
と言った。

目を開けたままにしてるから、
目が乾いて涙が出ることがあるらしい
(それもYouTubeで見て知っていた)


「お母さん。ありがとう。ありがとう。ありがとう。」

泣きながらお母さんに寄り添った。





10分もしないうちに、お母さんの呼吸は停止した。


「お母さん!まってよ!まだお兄ちゃんきてないよ!お母さん!まってよ!ちょっとまってよぉ…」

泣きながら声をかけてるけど、
お母さんは目を開いたままもう動かない。






そっとお母さんの瞼を閉じた。

しばらくお母さんの胸で泣いた。


お兄ちゃんに、LINEした。

「間に合わなかった。呼吸止まった。」


お兄ちゃんからテレビ電話。

呼吸や心臓が止まっても、しばらくは耳は聞こえるという説がある。

お兄ちゃんがお母さんに、
「今向かってるよ!
お母さん、ありがとうね。」

と伝えていた気がする。

このあたりのことは
もうあまり覚えていない。

15時35分。
お母さんが息を引き取った時間だ。


最期に先生がくるのは、家族が揃ってからになる。

お兄ちゃんがくるのを待った。

待っている間に、わたしの旦那と娘2人が病院に到着した。

小学生の娘に、
「ばあば死んじゃった。」
と伝えた。

娘と一緒にたくさん泣いた。


そのあとお兄ちゃんが病院に着いて、お父さんが先生を呼んだ。

わたしとお父さんとお兄ちゃんの前で、
死亡確認がされた。

「さいごはかなり痛がっていて、辛い状態にしてしまい申し訳なかったです。」
と先生が言っていた。


先生と看護師さんが出ていった。


お母さんに触れると、まだ温かかった。







2023年11月29日
最愛のお母さんが亡くなった。