タコの島 | 羽黒神社宮司のブログ

タコの島

珠洲沖にはむかし、おっとろしい大蛸がおったがや。

丸太みたいなごっつい足で大波起こいてわ船ひっくりかやいたりするもんで、漁師連中やおとろしがっとたがや。

この大蛸はときどき在所まで上がってきてわっさ(悪さ)するげった。
家はぼれてもう(壊れてしまう)わ、田んぼや畑もひっくりかやいてもうわ、ちょうもはちもつかなんだ(どうしようもなかった)。
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やっとこ家もなおって、田んぼも畑もいいがになってほっとしたころに大蛸はまた海からあがってきてわ~わやくそにする。
在所のもんなほとほといわっとったがや(困っていました)。

ある時また波が荒なって、沖見とった漁師が「オオダコがくるぞ~」って叫んだがや。
村はかいたらもたらや(ええとね、訳しにくいですな・・・ま、「大変な騒ぎ」というか「むちゃくちゃな」というか?そんなかんじです)。

村のもんな逃げ場失うて、海べりにある「山王の森」へ逃げ込んだがや。
「こんでしまいや」(もう終わりだ)と思うたほんときや。
「山王の森」の神様が現れて、でっかい剣で蛸の足をブツッ!ブツッ!と切って、頭を沖へ放り投げた。

村のもんらっちゃ大喜びや。
「山王の森の高倉彦(たかくらひこ)の神様がおらっちゃ(私たち)を助けてくださったがや。ありがたいことや」

ほれから海も荒れんがになって、魚もよう捕れるがになったげと。

高倉彦の神様が放り投げた蛸の頭は沖で島になったもんで、村は「蛸島」てよばれるがになったげと。



「珠洲のむかしばなし」⑧でございます。

珠洲市蛸島町は私が住む正院町の東隣の集落で氏神さまは「三代実録」に神階従五位を授くと記載のある高倉彦神社です。羽黒神社宮司のブログ
「山王の森」は同社の神域で珠洲市の天然記念物に指定されているうっそうとした自然林です。
また、蛸が島になったと伝えられる弁天島は山王の森のすぐ裏の蛸島漁港沖に浮かぶ「弁天島」で、高倉彦神社の摂社、蛸島姫神社が祀られています。
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高倉彦神社の宮司様は剣道の達人。お酒好きの宴会好き(それはどうでもいい)
前の記事のお好み焼会場です(それもどうでもいい)

蛸島町の祭礼は能登一豪華絢爛で賑やかな「キリコ祭り」で、神社には石川県無形文化財に指定されている「早船狂言」が奉納されます。

You tube画面にHP用の写真を提供して下さったTさんがおもいっきり写っています。

ちなみにこの「早船狂言」は単なる地域芸能ではなく、漁師さんの天気の見方や船の出し方などを覚えるための所作などが盛り込まれていて、毎年この狂言を演ずることによって知らず知らず漁仕事を覚えていく仕組み(?)になっているそうです。
「うん~どん~てんきに~ちゃわんぞら~ にんにくのか~わ~ むいた~よ~な~てんき~」