たかつぼりの宗兵衛さま | 羽黒神社宮司のブログ

たかつぼりの宗兵衛さま

上戸村の山のず~っと奥の方に「たかつぼり」ていうとこがあって、岩にほら穴があいとるげ。
そこに「宗兵衛さま」ていう神様な住んどったって、在所のもんなモノゴトあっときゃ、そこ行って御膳やとか椀やとか借りとってんとけの。
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「そうべさま、明日の法事の御膳な10人前足らんなけの~、貸してくだし~」
「おらかたに嫁さま来てねんけど、座布団5枚たらんなけの~、頼んまけの~」
ほんな具合にお願いすると、次の朝必ず穴の前に頼んだ物な出いてある。
モノゴト終わった後は借りたもんと一緒に油揚げお供えしとくがやった。
宗兵衛さまは「お狐さま」とも「お稲荷さま」ともいわれとった。

宗兵衛さまはたいそう派手らしいがで、キツネの仲間集めては一晩中宴会したりするもんで、山ん高は狐火や煌々として賑やかやったと。
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ある時、在所のとうとァ山道あるいとったら提灯持った人らっちゃァでっかいこと来たったげと。
「何事あるげきゃあ?」て聞いたら、
「輪島から嫁さま来てねんきゃァ。後ろから輿に乗っていらすわきゃァ」
とうとァ在所に帰って、ほの話在所のもんにしたけど「ほんなが知らんぞね。近頃嫁どりども聞いたことない」て、誰も知らなんだ。
後からよう考えてみたら、あれは宗兵衛さまの「キツネの嫁入り」やったげと。
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珠洲のむかしばなし⑦でございます。

この話は典型的な「椀貸し伝説」で、やっぱりある時「不心得者」がいて、借りた物を返さなかったため、以降は貸してくれなくなったと伝えられています。

キツネはお稲荷さんそのものではなく、「お使い」なのですが、混同した感じですね。

ところでこの「キツネの嫁入り」ですが、羽黒神社の棟梁さんが子供のころ見たというのです( ̄∀ ̄)
夜、秋祭りの獅子舞の練習に羽黒神社へ来た時、境内の裏の方でおびただしい数の「キツネ火」が西から東へ進んでいったというのですが・・・・はてさて・・・?

羽黒神社の境内裏手は「八丁平野」という田園が広がり、北は「八ケ山」西北に羽黒神社の旧鎮座地「羽黒山」があります。
$羽黒神社宮司のブログ八丁の水田に飛来するコハクチョウ)
そして、羽黒山の西側には熊谷町の氏神、稲荷神社が鎮座しています。
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(「夫婦(めおと)神狐」の奉納額)$羽黒神社宮司のブログ

ま、キツネはこの稲荷神社の?…とは申しませんが、今は繁殖したキツネが昼夜おかまいなく出没します。

キツネ社会にも昔ながらの結婚式をする律儀なヤツは少なくなったのでしょうか…