1994 フランス パリ
旅行最終日
カルチェラタンやソルボンヌ大学のまわりを、インチキ留学生のフリをしてうろついていた
坂道の上の方で、まったりしていると
下の方で物凄い群衆が、何かを叫びながら行進してくるのが見えた
それは周りの学生らも飲み込み(学生らは、うれしそうに行進に加わっていた)
あっという間に巨大なうねりとなって
セーヌ川へ続く大通りへと向かってゆく
人の流れ……
…まるで大蛇のようなこの光景を、坂道からしばらく呆然として見下ろしていた…
みるみるうちに人で膨れあがるデモ行進…
初めて生でデモというものを
まのあたりにして、頭の毛が全部バシッと立つようなゾワゾワ感に襲われる
そのエネルギーのうねりに加わってみたくなり、何のデモかもわからないが
とりあえず参加することにした
デモ行進に加わると、女の子からフランス語で書かれたビラを渡された
おそらく、このデモの理由が書いてあるのだろう…
もちろん
ジュッテーム(愛してるよ~)しか知らないおれに解読できるはずもない…
デモ行進はシテ島を渡らず左へ折れて車道を群衆で埋め尽くしながら
オルセー美術館の方へ向かってゆく
急に人で車道が溢れかえり、信号待ちをしていた車やバイクは身動き取れなくなり気の毒だった
ルーブル美術館の対岸まで来た時
デモ行進のかなり前の方で
パンッパンッと乾いた銃声が聞こえた
その瞬間、人の流れが一気に逆流!
皆、必死の形相で走り、逃げ惑う
おれもビビリまくって足が縺(もつ)れながら必死で走った
銃で撃たれることよりも
ここで転(こ)けてしまったら、逃げ惑う人達の下敷きになって死ぬ!絶対!
そのことのほうが、かなり怖かった
その後、しばらく警官隊と小競り合いがあったが…
徐々に人が減り、デモは自然消滅……
夜、宿に日本人おばさんの現地係員が迎えにきた
タクシーに乗せられ、いっしょに空港へ向かう
そのタクシーの中でデモの時もらったビラを渡して解読してもらう
眉間にシワを寄せて彼女が言うには
「これは若者達の賃上げ要求のデモです
珍しくはありません、しょっちゅう起こります」とのこと
この現実逃避のパリ旅行から数ヶ月後
勤めていた会社を辞めた……
……求めていたい My革命
明日を変えることさ
誰かに伝えたいよ
My Tears My Dreams 今すぐ
自分だけの生き方
誰にも決められない
君と見つめていたい
My Fears My Dreams 抱きしめたい
現実逃避1994~パリ~
Fin