1994
全行程フリープラン、ホテル付のツアーを申し込んだ
行き先はフランス パリ
シーズンオフだったせいか
ツアー客は、まさかのおれひとり…
成田から「おれだけパリツアー」は開催された
シャルル・ド・ゴール空港へ着くと、出口にはローマ字で、おれの名前を書いた紙を面倒臭そうに持ったアジア人おばさんが立っていた……
派手なスカーフを首に巻いてパリジェンヌを気取っていたおばさん…
しかもおれの名前を書いた紙を、金正日が手帳をかざすように持っていた…
「なんだよ、あれ……」と恥ずかしく思いながらも
アジア人パリジェンヌに近づくと、日本人のおばさんだった
派手なスカーフが印象的だったせいか、スカーフしか思い出せないが
現地係員は日本人のおばさんだった
事務的な挨拶を交わした後、タクシーに乗せられ宿へ向かう
タクシーの中で滞在中の緊急連絡先や最終日の何時に迎えに来るとか
そういう滞在中の注意事項を聞かされた
宿はポルト・ラ・ヴィレット駅の近くで
スカーフおばさんはおれのホテルチェックインを済ませたら、とっとと消えた
とりあえず部屋に荷物を放り投げて
メトロに乗ってセーヌ川へ向かう
すでに、陽は沈みかけていた
しばらくセーヌ川を眺めていたら
なぜか
泪が頬をつたった……
悲しいわけでもなく…
何かに感動したわけでもなく…
理由はわからないが、なぜか泣いた…
橋の下に描かれた落書きを見て
さらに泣いた……