ラーメン屋さんでのこと | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

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国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

 前回、ラーメン屋さんのことを話題にしました。またまた今日もラーメン屋さんでの出来事。恐縮です。

 みなさんはラーメン屋さんに行ったら何を注文しますか? 私は、醤油も味噌も塩も豚骨も何でも好きなんです。でも、三分の一の確率で頼むのはチャーシューメンです。

 チャーシューメンは「叉焼麺」とも書き、具として薄切りの豚肉を砂糖・酒・香辛料をまぜた醤油に浸し、天火で焼いたり蒸し焼きにしたりした焼き豚を用いたラーメンですよね。時々、チャーシューメンを「焼豚麺」と表記しているお店もありますが、これは意味的に伝わります。

 先ほど、隣町のラーメン屋さんに行きました。なかなかの人気店で有名なのですが、ここではお店の名前は伏せます。

 

『何にしようかな? 今日の気分はチャーシューメンだなあ』

 

そう思ってメニューを見てみると、チャーシューメンという表記は見つかりません。でも、「チャー牛麺」という表記を見つけました。

 

『ははあ……、豚肉でなく牛肉を使っているから、それを「売り」にしてこういう表記にしているんだな』

 

 だけどみなさん、考えてください。「焼豚麺」の「豚」の部分を「牛」に替えたというのなら「焼牛麺」でいいと思います。でも、「叉焼麺」の「焼」を「牛」に替えて「チャー牛麺」というネーミングには釈然としないものが残ります。そもそも「叉」は「さすまた」のことです。チャーシューを作る時に豚肉をさすまたに刺して炙ることによるわけです。

 なぜ、「焼く」の字が消えて「さすまた牛麺」になってしまうのでしょう? 実に手前勝手、自己満足の域を越えないネーミングと言えましょう。日本語パトローラーとしてはちょっと気持ち悪さが残ります。

 

私 「すみませ~ん」

店員「はい、いらっしゃいませ。いつもありがとうございます」

私 「チャーシューメンをお願いします」

店員「え?」

私 「チャーシューメン……」

店員「チャーギューメンですね?」

私 「あ、はい……」

 

『ぎゃ~、ここのお店は客にもその独りよがりなネーミングを言わせるのかあ~』

 

 「チャーシューメン」というメニューがなくて「チャー牛麺」なんですから、お客が「チャーシューメン」と注文したら、店員さんは、

 

『ああ、「チャー牛麺」ね』

 

とキャッチしてくれたらよさそうなものじゃありませんか。どうしても、客に言わせたいのなら、せめて全部片仮名で「チャーギューメン」にするとか「焼牛麺」とするとか、しっくり感を大切にしてほしいです。そう思いませんか?